「よく行く牛丼チェーンの中で最も好きなところは?」。この問いに対し、男性の43%が「吉野家」と答え、「すき家」(31%)、「松屋」(20%)、「なか卯」(4%)を圧倒しました(2013年7月「ソフトブレーン・フィールド」調べ)。



 男性が「最も好き」と答えた牛丼チェーンの「吉野家」は、全国に1200弱の店舗を展開しています。そんな吉野家の記念すべき1号店は、実は築地場外市場の場内にあるのです。



 1926年開店の歴史ある第1号店を訪れた、書籍『全国飲食チェーン 本店巡礼』の著者・BUBBLE-B氏は、「この築地店は築地市場で働くプロの方たちが日常的に利用しているため、一般的な吉野家の店舗とは様々な面で異なる」と語っています。



 まずは、営業時間。朝が早い築地市場にあわせ、月曜日から土曜日の朝5時から昼の1時までの営業となっています。昼の1時を過ぎると市場が閉まるため、吉野家の営業も終了。また、メニューは、牛丼と牛皿に特化しており、カレーや豚丼などのメニューは食べることができません。



 また、「プロとプロとが対峙する、日本一の現場」とBUBBLE-B氏が語るように、入店してみると、その異質な雰囲気に驚かされるそうです。



 店内はカウンターのみで、床は御影石が引き詰められた重厚感あふれるもの。スタッフは、築地店オリジナルの制服である「和服」を身に着けています。



「場所が場所だけに、お客さんはサッと食べ、サッと出ていく。仲間とくっちゃ喋って団らん、といったピースフルな空気はここにはない」(BUBBLE-B氏)



 BUBBLE-B氏がお客さんの注文をよく聞いていると、「つゆだくだくねぎだく」「あたま」など、築地店独特の用語で注文するお客さんがいたそうです。「ねぎだくだく」は「ねぎだく」よりもさらにねぎが多い注文ですが、これは同店でしか通用しないものなのだとか。



 築地店の常連客は、「食のプロ」が多いのも特徴。牛丼の味に対してもシビアな姿勢を持っており、帰り際に「今日のはちょっと味が違ったね」と一言残していく人もいるそうです。また、忙しい常連さんの時間を無駄にしないために、店長は常に「どのお客さんが何を注文するのか」を考えています。なんと、総勢500人ほどの顔とメニューが記憶しているそうです。



 お客さんの顔が見えたら、間髪入れずに調理の指示を出し、待たせること無く提供する。まさに、「プロ」と「プロ」が対峙する牛丼屋といえるでしょう。築地場外市場を訪れた際には、一度足を運んでみたいものです。