(写真:WEB本の雑誌)
(写真:WEB本の雑誌)

 日本文学振興会が主催する第149回芥川賞、直木賞の選考委員会が7月17日に開催され、芥川賞に藤野可織さんの『爪と目』(新潮4月号)、直木賞に桜木紫乃さんの『ホテルローヤル』(集英社)が選ばれた。



 日本最大級の動画サービス「niconico」の「ニコニコ生放送」(ニコ生)では、賞の発表及び記念会見の瞬間を生中継した。ジャーナリストの井上トシユキさんの司会のもと、評論家の栗原裕一郎さん、コラムニストのペリー荻野さんらが作品の講評を行いながら、発表の瞬間を待った。



 紀伊国屋書店、丸善&ジュンク堂書店、三省堂書店、蔦屋書店武雄市図書館の店頭モニターで、同放送の画面を表示。書店からのパブリックビューイングを実施した。前回の第148回芥川賞・直木賞の発表に続き、2回目の取り組みとなった。また、下北沢の書店B&Bでは、書評家の杉江松恋さん、豊﨑由美さん、翻訳家の大森望さんらが、賞の行方をニコ生中継を見ながら予想するイベントを開催した。



 三省堂書店神保町本店では、出入り口の多い1階ロビーのモニターでパブリックビューイングを実施。書店員は、放送開始の30分前より設営準備に入り、12名分の座席を準備した。



 しかし、書店の入り口付近ではなかなか座りにくいのか、モニターを目視しながらも、その場には立ち止まらず、通り過ぎる人が多かった。このパブリックビューイング目当てで来店したという3人組は、イベント情報を「niconico」のホームページ上で見たという。「ニコ生」のファンで、本も好きだということから、来店した。そのうちの1名は、直木賞の発表後、受賞作『ホテルローヤル』を購入した。



 芥川賞・直木賞のいずれの賞の発表の際も、モニターでその瞬間を見届けたのはわずか10名ほど。今回のイベントを担当した三省堂書店の松下恒夫さんは、「座席を設けたために、参加への敷居が上がってしまったのかもしれない。書店側も試行錯誤中。年に2回のお祭りなので、可能な限り続けて行きたい」と振り返る。



 今回のパブリックビューイング企画を手がけたニコニコニュースの高橋薫さんは、「書店からも出版社からも、"リアルとネットをつなぐ"良い取り組みとして評価してもらっている」と語る。「図書館でのパブリックビューイングも、今回から始めることができた。今後も、公共施設や地方にある"街の本屋さん"などでもパブリックビューイングを実施し、"人を書店に集める"取り組みを続けて行きたい」。