「どんでん返し率最大」と作家・中山七里本人も自信をのぞかせるミステリー『切り裂きジャックの告白』。発売後即重版となり、今年度のミステリー作品の大本命との声も聞こえてくる話題作です。



 第8回「このミステリーがすごい!」に、『さよならドビュッシー』『災厄の季節』(のちに『連続殺人鬼カエル男』として刊行)がダブルノミネートされた中山氏。『さよならドビュッシー』は、累積40万部を突破し、今年1月には橋本愛主演で映画にもなりました。奇才とも呼ばれる中山氏が今回選んだ題材は、あの猟奇事件。19世紀のイギリスを恐怖のどん底に叩き込んだ「切り裂きジャック」です。



 ある日の明け方、東京都内でも大規模署とされている深川警察署の目の前で、臓器のほとんどがくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見されました。残忍な殺人事件に捜査本部は混乱。そんな折、テレビ局に「ジャック」を名乗る犯人からの声明文が送りつけられました。



「わたしは時空を超えてまたこの世に蘇ってきた。木場公園の事件はわたしの仕事だ。手際は非常によかった。彼女には悲鳴を上げる暇さえ与えなかった。わたしはこの仕事を楽しんでいるのだ──ジャック」



 悔しかったら捕まえてみろと言わんばかりの挑戦状です。マスコミの報道で世間が動揺するなか、繰り返されるジャックの犯行。都内で多発する連続殺人に、人々はパニック状態に。やがて、事件にはある共通点があることが明らかになります。それは、「被害者は同じドナーから臓器提供を受けていた」というもの。ジャックの狙いは何なのか、そして、ジャックとは一体何者なのか......。



 書評家・大森望氏が、「"どんでん返しの帝王"がまたやった!ラスト30ページに刮目せよ」と評する本作。その言葉の通り、最後には大きなどんでん返しが待っています。



 『連続殺人鬼カエル男』などの中山七里作品にはお馴染みのキャラクターも登場しており、ファンにとって見所の多い作品だと言えるでしょう。話者の"視点"が次々と変わるので、飽きることなく一気読みすることができる作品です。