6月29日は、『星の王子さま』や『夜間飛行』などの著者として知られるフランス人作家、アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの誕生日です。彼が1944年にドイツ軍の戦闘機に撃たれ、地中海で行方不明になってからおよそ60年が経ちました。



 サン=テグジュペリの本国・フランスでは『星の王子さま』のアニメ映画化が決定。アメリカでも、大手映画会社による映画化が進行中であるという報道があります。出版からちょうど70年が経ちましたが、全世界で8000万部が発行された『星の王子さま』人気は世界中で健在のようです。



 『星の王子さま』の翻訳権の保護期間が切れた日本では、多くの出版社が新訳を発表。その中の一冊が、今年刊行された天文学書『星の王子さまの天文ノート』です。



「人間はみんな、ちがった目で星を見てるんだ。旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。ちっぽけな光くらいにしか思ってない人もいる。学者の人たちのうちには、星をむずかしい問題にしてる人もいる。だけど、あいての星は、みんな、なんにもいわずにだまっている。でも、きみにとっては、星が、ほかの人とはちがったものになるんだ......」



 本書は『星の王子さま』に登場する言葉やイラストを用いながら、美しいビジュアルと表現で、星の世界を幅広く紹介する天文学の入門書。月の満ち欠けや星座の見方、流星や彗星の違い等の基本を丁寧におさえながらも、「鉛筆星雲」や「エスキモー星雲」、「小さな幽霊星雲」などの名前も形も変わった星雲や星団、太陽系のあらゆる銀河や天体など、天文の世界の不思議を紹介しています。また、129億年前という遥か昔に存在した巨大な銀河「ヒミコ」を発見した日本人研究家による読み応えたっぷりの手記など、天文学の第一人者たちによるコラムも密度が濃く、充実したものとなっています。



 監修を務める国立天文台所属の天文学者・縣秀彦先生によれば、「私たちはどこから来てどこに行こうとしているのか?」「私たちは何者で、宇宙には私たちのような生命が住む星は他にあるのか?」という二つの大きなテーマは、現代の科学をもって、いよいよ解き明かされようとしてるのことです。



 人類が把握しているのは、広大な宇宙全体の5%に過ぎないと言います。私たちが生きている間に宇宙は、どこまで解明されるのか。豊富な写真とイラストで、好奇心をかき立ててくれる一冊です。