嵐の櫻井翔さん主演で現在放映されているドラマ「家族ゲーム」(フジテレビ)の原作は、1981年に「すばる文学賞」に選ばれた小説です。のちに芥川賞をとり映画化された『蛇にピアス』は、2003年の「すばる文学賞」作品。そんな「すばる文学賞」を昨年受賞した作品は、とても怖いサラリーマン小説です。

「お前、今日は案内あんの」
「一件、入ってます」
「入ってますじゃねぇよ。てめぇがサボってるおかげで、うちの課の数字が見えなくなってんだよ」

新人作家の純文学小説なのに、すでに3万部も売れ、出版業界で話題になっている本作『狭小邸宅』。不動産会社に勤める若手社員の物語です。この会社では、売れない部下に対して、上司によるイビリが毎日あります。

「てめぇ、冷やかしの客じゃねぇだろうな。その客、絶対ぶっころせよ」
「はい、絶対殺します」

 客に家を買わせる、という意味で日常的に「殺す」が使われる職場。お客を一向に殺せない入社3年目の主人公・松尾は、本社・恵比寿から支社・駒沢への異動を命じられ落ち込んでいる青年。駒沢へ異動した初日、新しい上司にこんなことを言われます。

「よそで売れなかった奴は駄目なんだ、売れたためしがない。だから、悪いが早いところ辞めてほしい」

 かろうじて「売ります、やらせて下さい」と上司に懇願する松尾。果たして、松尾はお客を殺すことができるのか? 同じすばる文学賞を受賞した『家族ゲーム』や『蛇にピアス』のようにドラマ・映画化されたら、話題騒然になること必至の一冊です。