市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』の公開通し稽古。大詰の最終盤、討ち取られた斎藤別当実盛(市川團十郎)が高楼に現れる。実盛の思いを汲み、戦のない世を目指さんとする木曽義仲(宮舘涼太・義賢と父子二役)とこののち見つめあう[大詰・第二場・篠原野陣の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)
市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』の公開通し稽古。大詰の最終盤、討ち取られた斎藤別当実盛(市川團十郎)が高楼に現れる。実盛の思いを汲み、戦のない世を目指さんとする木曽義仲(宮舘涼太・義賢と父子二役)とこののち見つめあう[大詰・第二場・篠原野陣の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)

そこにいたのは、「Snow Manの舘様(だてさま)」ではなく、歌舞伎役者・宮舘涼太――いや、源義賢だった。渾身の演技が、その素顔を忘れさせた。

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荒い息をつく音だけが、場を支配する。

背後から羽交い締めにして生け捕ったりと声を上げる敵方を、我が身とともに刃で貫き討ち取ったのは、源義賢。死を目前に、まだ見ぬ我が子への思いと源氏再興の志を切々と述べ、戸板に仰向けに倒れ込むと、頭を下にして滑り落ちる壮絶かつ見事な最期を遂げた。

市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』の公開通し稽古。源義賢(宮舘涼太・義仲と父子二役)は、背後から羽交い締めにして生け捕ったりと声を上げる敵方を、我が身とともに刃で貫く。緊迫感あふれるクライマックス[序幕・第一場・都白河義賢館の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)
市川團十郎襲名記念プログラム『SANEMORI』の公開通し稽古。源義賢(宮舘涼太・義仲と父子二役)は、背後から羽交い締めにして生け捕ったりと声を上げる敵方を、我が身とともに刃で貫く。緊迫感あふれるクライマックス[序幕・第一場・都白河義賢館の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)

1月5日、東京・新橋演舞場。翌6日に初日を迎える歌舞伎「SANEMORI」の公開通し稽古が行われた。

昨年11月に十三代目を襲名した市川團十郎(十一代目市川海老蔵)の、襲名記念プログラムのひとつでもあるこの公演。團十郎の言葉を借りれば、「今回の『SANEMORI』は2019年以来の再演となりますが、宮舘涼太さんが木曽先生(せんじょう)義賢と源義仲の父子二役を務めるなど、脚本や演出などを練り直しての上演」となる。

その序幕第一場・都白河義賢館の場は、一般的に「源平布引滝」の「義賢最期」として知られる場面だ。平治の乱(1159年)に平清盛が勝利したことで平家が全盛を誇るなか、反旗を翻す決意をした源義賢が、源氏再興の旗印である“源氏の白旗”とともに、身重の妻・葵御前を屋敷から逃し、たった一人、平家方を迎え撃つ。

初演時は團十郎(当時は海老蔵)が演じたこの義賢を、今回はSnow Manの宮舘涼太が務めている。

2019年に演じた木曽義仲に加えての父子二役を、昨年10月の製作発表会見で海老蔵に“サプライズ発表”された際、目を丸くして口を開けたり閉じたりしていたのが嘘のような、堂々たる義賢の姿。舞台「滝沢歌舞伎」などで鍛えた殺陣をはじめ、戸板倒しや、梯子に登っての立廻りなど、歌舞伎らしい見せ所も満載だ。

木曽義仲(宮舘涼太)や巴御前(中村児太郎)ら源氏が、平家方と激しく討ち合う。本舞台から花道、そして一階客席通路へと続く大立ち回りは迫力満点[『SANEMORI』の公開通し稽古。大詰・第二場・篠原野陣の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)
木曽義仲(宮舘涼太)や巴御前(中村児太郎)ら源氏が、平家方と激しく討ち合う。本舞台から花道、そして一階客席通路へと続く大立ち回りは迫力満点[『SANEMORI』の公開通し稽古。大詰・第二場・篠原野陣の場]。(写真・松永卓也/写真映像部)

義仲としての演技もより深まっていた。「自分と似ている」部分があると語っただけあって、義仲の義に厚い、筋の通った魅力がまっすぐに伝わってくる。大詰での1階客席通路を使っての躍動感あふれる殺陣では、その美しさと迫力を間近で味わうこともできる。

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初日を前に、宮舘さんのコメントは…