カンヌ映画祭で最高賞をとったポン・ジュノ監督 (c)Festival De Cannes
カンヌ映画祭で最高賞をとったポン・ジュノ監督 (c)Festival De Cannes

──出会わない二つの階級が出会ったらどうなるか、というのが映画の意図でしょうか?

「それこそが映画のパワー、強みだと思うのです。映画の興奮はそこから生まれます。現実的にはほとんど出会わないような人たちが出会ったらどうなるか。それを詳細に描くことができるからです」

──女性の地位は韓国ではどうですか。この映画に登場する女性は、家族に非常に献身的で教育熱心です。

「この映画に登場する女性たちは夫に従って生きている主婦で、裕福なほうの妻は、家庭をうまく仕切ることに全力を傾けています。以前の作品の『オクジャ』に登場する女性はすべて現代的な女性ばかりだったのに比べると、貧困家庭のほうの妻は特に古風ではないと思います。かなり現代的に描きました」

──北朝鮮のニュースキャスターをまねるシーンがあります。あれは韓国人の抱いている北朝鮮のイメージでしょうか?

「ニュースアンカーの物まねが登場したのは、彼女の語り口が韓国人にとっても非常に不思議な感じなので、冗談として登場したのです。しかし韓国と北朝鮮との関係について言えば、我々にとっては非常に重要な課題です。戦争の危機をかかえ、我々としては平和を望んでいます。その話し合いがうまくいくことを望んでいます」

──富裕層と貧困層を映画で扱うことにしたのは、貧富の差に怒りを感じたからですか?

「この映画で最も重要なのは怒りではなく悲哀です。主人公は一生懸命働いて裕福になろうとしますが、実現する可能性は非常に低いんです。彼のような貧しい人が豪邸を買うのに何年かかるか計算してみたら547年かかるという答えが出ました。だから主人公の存在には哀れみと悲しみがこめられているのです」

(取材・文/高野裕子)

週刊朝日  2020年2月21日号