■三山ひろし/けん玉
絶え間ない向上心で活躍の場は海外へ広がる
10周年イヤーの締めくくりで、4月末にファン120人とともに香港・マカオ旅行をして豪華客船でのコンサート、デビュー11年目となる6月にはブラジルで移民111周年の式典に参加してコンサートを行うなど、活躍の場は海外にも広がり始めた。
「香港では英語で映画音楽『慕情』を歌い、ブラジルでは『よさこい』をみんなで踊りました。5月の亀有でのコンサートではGS(グループサウンズ)特集。『バン・バン・バン』ではお客さんもすごく盛り上がっていただけた。コンサート後の握手会の反応で、喜んでもらえたことがわかると私もホッとします。演歌以外の歌にもチャレンジしているのは、お客さんがどういう気持ちで聞きに来てくれているのかを考えて、一番元気になってくれそうな歌を歌いたいから。“歌手・三山ひろし”の力量が問われていると思って一生懸命歌っています」
聞く人を元気にさせるとして三山ひろしさんの声は「ビタミンボイス」とも称される。「そんなお客さんの期待を裏切らないように少しでも自分の幅を広げていきたい」と三山さん。
その決意は10年以上前にさかのぼる。ガソリンスタンドでアルバイトをしながら歌手を志し、付き人をしながら修業をしていたころから、デビューできたら自分はどういう歌手になりたいかについて考え続けたという。
「考えた結論は、歌でお客様に元気になってもらえる歌手になるということでした。お客さんにとって生きる力にもなる元気の素。そんな歌手になるにはどうすればよいか、ずっと考え続けています」
三山さんがそう考えたのは、デビュー前に「歌がうまいというのは技術とは別のもの」と言われたから。それ以来、「今やっていることを一生懸命やる」という気持ちで、とにかく目の前の人に気持ちが伝わるように、歌の情景が伝わるように心がけて歌い続け、結果を出してきた。
「だから、紅白に出て知名度が増してブレークしたとは思っていません。目の前のお客様に喜んでもらうことばかりを考えて10年間歌い続けた結果だと思っています。私の代名詞のようになった“けん玉”も、昭和の歌や演歌でお客さんを勇気づけたくて、昭和の遊びをやってみようとして始めたことです」
聞き手を元気にするためなら努力は惜しまない、頑固な「土佐のいごっそう」である。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2019年7月12日号