──役作りの方法は?

 どういう役であっても、一番の理解者でありたいし、親友のように寄り添いたいなと思います。なかにはとてつもなく悪いキャラクターもいますが、それでもそのキャラクターなりの正義があるので、まずはそれを純粋に理解しなくてはいけない。もちろん、「人を殺すのはいけない」とか、一般的な善悪はわかっていますよ。でも、そのキャラクターを演じるうえでは肯定してあげなくてはいけない。

鈴木拡樹さん [撮影/馬場道浩、ヘア&メイク/AKI、スタイリング/中村美保、アートディレクション/福島源之助+FROG KING STUDIO、衣装協力<スーツスタイル> ジャケット¥85,000、パンツ¥37,500(ともにCRUCE&C/Karaln)シャツ¥23,000(kiryuyrik/Karaln)靴¥22,800(VARISISTA)<カーディガンスタイル> カーディガン¥25,000、カットソー¥12,000(ともにwjk/wjk base)パンツ¥28,000(MASON’S)]
鈴木拡樹さん [撮影/馬場道浩、ヘア&メイク/AKI、スタイリング/中村美保、アートディレクション/福島源之助+FROG KING STUDIO、衣装協力<スーツスタイル> ジャケット¥85,000、パンツ¥37,500(ともにCRUCE&C/Karaln)シャツ¥23,000(kiryuyrik/Karaln)靴¥22,800(VARISISTA)<カーディガンスタイル> カーディガン¥25,000、カットソー¥12,000(ともにwjk/wjk base)パンツ¥28,000(MASON’S)]

──自分が演じるキャラクターに、影響されることは?

 仕草やクセとか、自分では気づかなくても、周りが感じることはあるみたいですね。女性役を演じているときに内股になっていることに気づいて、恥ずかしくなったりします(笑)。

──3月には「どろろ」、4~5月には「PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」、6月には「最遊記歌劇伝─Darkness─」と、主演舞台が続きます。どうやって演じ分けているのでしょうか。台詞を覚えるだけでも大変では?

 自分でも驚きますね(笑)。僕の場合、稽古に参加する前に時代背景や職業などの下調べをして、その役が持っているクセや性格について考えます。そうすると、少なくとも稽古場に立つことはできますね。台詞は、稽古しているなかで覚えることが多いです。「相手の台詞に対してどういう言葉が出るか」「自分の台詞に対して相手がどう反応するか」というのが、演劇であると教わったので、言葉をぶつけ合うことで覚えていくんでしょうね。台詞覚えは早いほうではなくて、遅いほうに入ると思います。

──たくさんの役柄を演じているうちに、キャラが混ざってしまうことは?

 あるのかもしれないですね(笑)。もう10年以上この仕事をしているので、「このキャラ、あの人物に近いな」とか、過去に演じた役の記憶がよみがえったりします。

■自分にダメ出しできる強み

──07年のデビュー以来の変化や、ターニングポイントは?

 たくさんあります。壁にぶち当たったときもありました。今年6月に「Darkness」が上演される「最遊記歌劇伝」の1作目が僕の最初の主演作ですが、08年に1作目、09年に2作目をやった後、3作目をやるまでに5年かかっているんです。いろいろな理由があったと思うんですが、僕自身としての力が足りなかったんだと思いますね。「シリーズもの」と言われていても、続けられないこともあるのだなと。「演劇が楽しい」という思いでやっていたけれど、「届ける」ということを、きちんと理解できていなかったんだと思いました。運がいいことに、その5年の間も出演作は途切れることなくあったので、主演を務める方がどういうふうに周囲を引っ張っているのか、周りの方がどういうふうに支えているのか、アンテナをはってみたり。スタッフさんと話をして、照明や音響がどういうふうに成り立っているのか聞いてみたり。演劇というもの、主演であるということ、役者であるということについて、ものすごく考えました。

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やはり、主演は特別?