東尾修
東尾修

 WBCで世界一の栄冠を手にした侍ジャパン。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、「スケールではまだ、メジャーリーガーのレベルに達していない」と警告する。

【写真】エンゼルスの大谷翔平に適時打を打たれたアスレチックスの藤浪晋太郎

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 日本のプロ野球だけではなく、米国のメジャーリーグも日本選手の一挙手一投足が報じられている。10年以上前、イチロー、松井秀喜に加えて松坂大輔、ダルビッシュ有、黒田博樹ら多くの日本選手が在籍し、日本人対決は毎週のようにあった。

 今は大谷翔平という、スーパースターがいる。さらに日本選手が各球団の主力を張り、当時を期待値ではしのぐかもしれない。日本選手の地位というものは歴史を経るたびに上がっていると実感する。先人たちの頑張りも相まって、海を渡る選手はメジャーの実績がなくとも、高額の長期契約を得ることができる。

 だからこそ、これからメジャーを目指す選手に勘違いしてほしくないことがある。「日本で通用しないからメジャーで……」と1ミリでも思っているなら、その考えは改めたほうがいい。何年も前からメジャーで戦うことを目標にし、そのための準備も行い、日本国内のペナントレースでも色々な試行錯誤を重ねる。その上でメジャーに移籍しても、新しい発見なんていくらでもある。「心技体」の部分で戦う準備が整わない選手が通用するほど甘い世界ではない。

 さらに、一度海を渡っても、数年後にメジャーで再契約してもらえる選手は限られる。特にポスティングなど球団に許可を得てメジャー挑戦した選手は、心情的にもすぐには日本に戻れないことだろう。マイナーに落ちた選手が再びはいあがることが契約上含めて難しいのも、今までの選手が証明している。メジャーで活躍した選手が日本に戻って、同じような成績を残せるとも限らない。

 それだけ、自らの野球人生に影響を与える決断になるということだ。何もメジャー挑戦を否定しているわけではない。ただ、軽く見ないでほしいということだ。自分の野球人生をマネジメントしてもらいたい。日本球界の未来を背負う必要はないが、自分の人生に対して「覚悟」だけは持って海を渡ってもらいたい。

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東尾修

東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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