ライター・永江朗さんの「ベスト・レコメンド」。今回は、『日本のカルトと自民党』(橋爪大三郎、集英社新書 1276円・税込み)を取り上げる。

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 岸田政権は旧統一教会問題を放置したままやり過ごそうとしている。だが、「こども庁」に無理矢理「家庭」の2文字を押し込んだことにも表れているように、旧統一教会などカルトの息がかかった議員たちは、国政をねじ曲げている。橋爪大三郎『日本のカルトと自民党』はいまこそ読むべき一冊だ。

 なぜカルトは悪いのか。宗教社会学者の著者は宗教をウイルスに例える。ウイルスは人から人へと感染するが、害のないものが多い。よい働きをすることもある。ところがカルトは病原性の高いウイルスのようなもの。

 無害か有害かは、実生活への影響で線引きできる。オウム真理教のように出家を強いたり、旧統一教会のように多額の寄付をさせたりするのはカルトだ。

 カルトにもいろいろあるが、著者はこの本で旧統一教会、そして日本会議を取り上げる。彼らは自民党に深く食い込み、政策に影響を及ぼしてきたからだ。日本会議の母体は新宗教の生長の家である。ともにきわめて病原性が強いウイルスだ。

 誤解されるといけないので念を押すが、著者は宗教を否定しているわけではない。しかし、カルトではない善良なる宗教も含めて、政治は宗教とはっきり区別をつけるべきだという。政教分離である。

 宗教は排他的だ。ひとつの宗教が政治と結びつけば、他の宗教との争いが生じる。政教分離ではない他国を見ればそれはあきらかだ。争いや分断を防ぐためにも政教分離は大切だ。

 自民党から旧統一教会や日本会議を取り除くだけでなく、公明党は解散するのがいい、共産党も看板を下ろして普通の政党に生まれ変わろう、と著者はいう。ぼくも賛成だ。

週刊朝日  2023年4月21日号