西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「マスクをはずそう」。

*  *  *

【弊害】ポイント

(1)マスクをはずしていいのにマスクをしている人が大多数

(2)マスクの健康へのマイナスを、みんな肝に銘じていない

(3)マスクが一番よくないのは呼吸を阻害するところ

 3月13日から、マスクを個人の判断ではずしてもいいことになりました。ところが、街を歩いてみると、いまだにマスクをしている人が大多数なのです。

 これは、マスクをすることによる健康へのマイナスをみんなが肝に銘じていないからでしょう。これまで、ここで何度も書いてきましたが、マスクはコロナ感染予防のための必要悪なのです。いまのように、コロナのリスクがなくなってきたときに、健康によくないマスクをつける必要はありません。まあ、花粉対策なら、しかたがないかもしれませんが。

 なぜマスクは健康によくないのでしょうか。それは呼吸を阻害するからです。人は平均すると1分間に約15回、1日に2万1600回呼吸をします。この呼吸の質を高めることが健康の基本です。呼吸は人の体の自然治癒力や免疫力のベースになるのです。ところが、私もマスクをしてみて実感したのですが、マスクで口と鼻を覆われているとまともな呼吸ができません。マスクをはずしたときの爽快感は体がまともな呼吸を欲していたことを示しています。

 呼吸は自律神経の交感神経と副交感神経にも深く関わっています。現代人は様々なストレスで交感神経が優位になっています。このアンバランスを整えるには、吸う息よりも吐く息を重んじる必要があります。吐く息に心を込めると、副交感神経を優位にすることができるのです。このときにもマスクが障害になります。しっかり息を吐くことができないのです。

著者プロフィールを見る
帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

帯津良一の記事一覧はこちら
次のページ