ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は「水卜麻美さん」について。

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 日テレアナウンサーの水卜(みうら)麻美さんが、俳優の中村倫也(ともや)さんとご結婚されました。「ミトちゃん」こと水卜さんとは、かつて「ヒルナンデス!」で6年以上ご一緒した間柄です。私もミトちゃんも番組開始時(2011年春)からのメンバーであり、まだ平日昼間のテレビ出演(キー局の生放送)に不慣れで戸惑っていた私にとって、わずか入社2年目だった彼女の存在はとても心強かったのを憶えています。しかも誕生日が同じ4月10日。干支もちょうど一回り下のうさぎ同士です。

 ミトちゃんと初めて会った当時の私には、いわゆる「毒舌」という役割がありました。特に若い女子アナに対しては、必要以上に目の敵にするのが半ばお約束のようになっていたのですが、それを平日の昼日中から毎週やるとなると、さすがにそれは観ている方もしんどいはず。何よりミトちゃんが気の毒です。しかし、偉そうに毒づくか下ネタを言うぐらいしか芸のなかった私には、他の選択肢など皆無。結局は歯切れの悪い立ち位置に終始するしかない週がしばらく続いた記憶があります。

 そんな私を、知り合って間もない先輩共演者たちがフォローし救ってくれました。中でもミトちゃんの慎重で堅実でひたむきで、責任感が強く、やや後ろ向きな性格は、いつのまにか私の心の拠り所になっていたような気がします。

 その頃は、テレビの仕事がなければ、夜はお店にも出勤していたので、金曜日の21時ぐらいになるとミトちゃんに「ねえ、まだ会社にいるなら帰りに一杯寄ってかない?」と、先輩面して電話をかけ誘い出したことがありました。真面目なのか要領が悪いのか、彼女は金曜日の夜だというのに、独り会社でデスクワークをしていることが少なくなく。でも「仕事まだ残っているけど、いいか。キリの良いところで終わらせて、ミッツさんとこ行っちゃおうかなぁ。へへへ」と、20代前半の花形女子にはあるまじき色気の欠片もないふたつ返事で飛んできては、閉店まで飲み明かしたり。またある時は、ピーターさん宅での飲み会で、「氷が足りない!」と言われ、ふたりで夜道をダラダラと歩きながら、コンビニへお使いに行ったり。

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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