※写真はイメージです (GettyImages)
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 実家の片付けは、「親がこの世を去ってからの話」とタカをくくるなかれ。“遺品”になることで、より片付けがしづらくなるという。生前整理も遺品整理も基本は同じ。プロのコツを聞いた。

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「こんなことなら、母が生きているうちに一緒に片付けていればよかった」

 埼玉県在住の小島サトコさん(仮名・63歳)。2年前に母親が亡くなって以降、母親が一人で住んでいた九州の実家は空き家のままになっている。サトコさんには妹が一人いるが、長野県に嫁ぎ、2人とも実家から遠く離れた地で自分たちの生活を築いた。

 実家に帰るのは年に2~3回ほどだったが、3日に1回は電話で母親の様子を確認していた。その母親が倒れたのは突然のことで、入院からわずか3週間で息を引き取った。入院したのは、コロナ禍で厳しい面会制限が敷かれ、面会がかなわなかった時期。ついに会うことができないままに息を引き取った。

「もっとできることがあったんじゃないか」「最期に立ち会うこともできなかった」──。悲しみに暮れる中、亡くなった後のさまざまな手続きに追われた。各種手続きがようやく一段落ついたとき、目の前の課題として残ったのが、家財がぎゅうぎゅうに詰まった実家だった。

 長年、空き家状態にしていると、近隣に迷惑がかかることになりかねないし、固定資産税などの費用もバカにならない。妹と「早々に手放すようにしないと」とは話しつつも、なかなか片付けが進まないという。

「というのも、母親が亡くなった後、実家にあるあれもこれもが思い出の品に思えてきて、いざ片付けに取りかかろうと思っても、なかなか進まないのです。『これ、母親が大事にしていたな』『あのとき着ていたな』なんて思い出して、また思い出に浸ったりして。せめて生前、母親がいる物・いらない物に分けるだけでもしてくれていたら、もっとスムーズだったと思いますが、急な入院だったこともあり、家の中は母親が暮らしていた日常が残ったまま。家財の整理は、時が止まった空間を荒らすような気がして……」(サトコさん)

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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