白髪の高齢女性(小田原さち)がコンビニのレジで小銭入れから代金を出そうとしている。背後にはサングラスの強面(こわもて)の男性(呂布カルマ)が並んでいる。焦る女性。男性のトントンという靴音が響く──。

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「誰も怒ってなんかない/アンタのペースでいいんだ/何も気にすんな」

「迷惑かけてしまってるなって/焦ったらまさかの優しい発言/アタシも反省見た目で判断/もう要らないわ色眼鏡なんか」

 このCMは2022年度ACジャパン全国キャンペーンに選ばれた「寛容ラップ~たたくより、たたえ合おう。」。不寛容な言説が飛び交う現代社会に突き刺さるメッセージ性と「ディスらないラップバトル」という意外性で、SNSを中心に大きな話題になった。

 このCMを制作した東急エージェンシー関西支社のクリエイティブディレクター、森井聖浩さん(49)はこう語る。

「私が書いた『たたくより、たたえ合おう。』というコピーをもとに制作しました。コピー自体は誰も否定できない正論なので、説教くさくなると伝わらない。できる限り受け入れられるようにエンターテインメントに注力しました」

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