菊地陽子
3月15日にリリースされた浦井健治さんのアルバム「VARIOUS」。ヒット曲のカバーやミュージカルの人気曲が収録されているが、注目は自分のパーソナリティーにリンクした新曲だ。
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父を亡くしてから、そのことについて公の場で話すことはなかった。が、それから数年後に上演されたミュージカル「GHOST」の会見で、浦井さんは父親の死について触れながら、「この作品によって、今を生きる素晴らしさを再認識してもらえたら」と語った。世界は、まだコロナ禍の真っただ中。浦井さんが出演予定だった舞台が公演中止になるという経験もした中、あらためてお客さんが劇場に足を運んでくれることのありがたみを感じていた時期でもあった。同時に、エンターテインメントこそが、疲弊し切った人々の心に活力を与えるものだということも確信していた。
その翌年のことだ。3枚目のアルバムを準備している中で、ミュージカル「COLOR」で共演した植村花菜さんに、楽曲のお願いをすることに。
「テーマとして“家族”というキーワードを決めると、家族に対する率直な想い、子供の頃の思い出など、何でもいいから気持ちを文章にして送ってほしいと言われたんです」
それをもとに、曲のイメージを膨らませていきたいと植村さんは言った。植村さん最大のヒット曲「トイレの神様」は、亡き祖母との思い出を歌った曲だ。ソングライティングを依頼された立場とはいえ、その楽曲には、何かしら浦井さんのパーソナルな部分を投影させたいと考えたのだろう。
「父が遺してくれた言葉、父との思い出を、作文とも言えないような、箇条書きのようなものにして植村さんに渡して、できあがった曲が、まさに僕が伝えたい感謝の思いや、父から教わったこと、これから誰かに手渡していきたいことがギュッと詰まった曲になっていて……。とくに後半に、『僕が父に対して何を思っていたか』ということを集約したワンフレーズがあって、『花菜さん、天才だな』って思いました。僕が書いた作文を、『つまり、こういうことだよね』ってまとめてくれたフレーズが、まさに僕の心情にピッタリだった。それでいて、決して感動を煽るような歌詞でもメロディーでもなくて、ただただ優しい空気に包まれる。そんな曲になったんです」
ゲッターズ飯田
ミッツ・マングローブ
姜尚中
