作家・長薗安浩さんの「ベスト・レコメンド」。今回は、『データで読む地域再生』(日本経済新聞社地域報道センター編、日経BP 日本経済新聞出版 2090円・税込み)を取り上げる。

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 経済分野に関するいくつかの国際比較データを見ればわかるように、この国が衰退期を迎えているのは間違いないだろう。その主な原因としてあげられる少子高齢化は人口減を招き、労働力の減少や消費力の縮小、社会保障費の急増を引き起こす。

 そんな厳しい変化は当然、各地域の存続をおびやかす難題となり、様々な対策が打たれてきた。日本経済新聞社地域報道センターがまとめた『データで読む地域再生』を読むと、全国の自治体の大胆な、あるいは涙ぐましい施策をランキング付きで知ることができる。

 例えば、出生率1.8を達成した岡山県奈義町は、出産祝い金、学生への奨学金無利子貸与、子育て支援施設、育児の合間の仕事紹介などを整備。北海道の旧産炭地の三笠市は、子育て支援や住宅購入の補助を厚くすることで、人口が転入超となった。増加傾向にあるごみ処理費を抑えるため、長野県川上村は生ごみの回収を一切せず、各家庭で堆肥化している。

 人口減対策だけでなく、雇用確保、経済振興、医療・社会保障対策、税収減対策などは、どこで暮らしていても私たちに密接に関わってくる。だから、それらの課題と向きあった先行事例を紹介するこの本は、各自治体にとってサバイバルのための参考書となるだろう。

 とはいえ、国全体の人口減が止まらない以上、或る地域で首尾よく成果があがっても、他の多くの状況悪化は続くことになる。少子高齢化は先進国が必ず直面する試練とはいえ、警鐘は20世紀後半から激しく鳴っていたのに……。

 もう猶予はない。

 岸田政権が対策を誤れば、きっと異次元の惨状がやってくる。

週刊朝日  2023年3月17日号