藤井隆(ふじいたかし)/ 1972年生まれ。大阪府出身。92年吉本新喜劇入団。同年初舞台を踏む。2000年には、「ナンダカンダ」で歌手デビューし、紅白歌合戦に初出場。芸人、タレント、俳優、歌手としてマルチに活躍。最近の舞台出演は、田村孝裕脚本・演出「ゲゲゲの鬼太郎」、蓬莱竜太作・演出「広島ジャンゴ2022」(ともに22年)、三谷幸喜作・演出「大地(Social Distancing Version)」(20年)など。[撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃 ヘアメイク/柳美保(Tron Tokyo Inc)スタイリスト/奥田ひろ子 衣装協力/ズッカ、71ミシェル、フット・ザ・コーチャー(ギャラリー・オブ・オーセンティック)]
藤井隆(ふじいたかし)/ 1972年生まれ。大阪府出身。92年吉本新喜劇入団。同年初舞台を踏む。2000年には、「ナンダカンダ」で歌手デビューし、紅白歌合戦に初出場。芸人、タレント、俳優、歌手としてマルチに活躍。最近の舞台出演は、田村孝裕脚本・演出「ゲゲゲの鬼太郎」、蓬莱竜太作・演出「広島ジャンゴ2022」(ともに22年)、三谷幸喜作・演出「大地(Social Distancing Version)」(20年)など。[撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃 ヘアメイク/柳美保(Tron Tokyo Inc)スタイリスト/奥田ひろ子 衣装協力/ズッカ、71ミシェル、フット・ザ・コーチャー(ギャラリー・オブ・オーセンティック)]

 22歳から85歳までの4人のおとこたちの人生を描いたミュージカルで、演出家から「自由にやって」と言われ、途方に暮れたという。マルチに活躍する藤井隆さんにとっての「舞台」とは?

【写真】くりぃむ上田に「天才」と言われながら25年間パッとしなかったのはこの人!

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■オンステージがいちばん好き

 ルールを守った上で、そこから発想を広げていくのが好きだという。舞台のルールなら、体はお客さんのほうに向ける。セリフは、遠くの席の人に届くようにできるだけはっきりと。ところが、岩井秀人さんが脚本・演出を担当する舞台「おとこたち」の稽古が始まると、藤井さんは何度となく途方に暮れることになった。それは、岩井さんの稽古のやり方に、ルールがまったくないからだ。

「たとえば、岩井さんに『好きなところに立ってください』と言われたとき、僕はどうしてもお客さんに体を開いてしまう。岩井さんは優しいし、現場は決して減点法じゃないけれど、僕が勝手に想像しちゃうんです。ルールどおりの立ち居振る舞いしかできない僕を、たぶん岩井さんは、『それじゃつまんないのに』と思ってるんだろうな、とか(苦笑)。これまでいろいろ経験してきましたが、『どうぞご自由に』と言われると、アタフタしてしまうんです」

「じゃあ、今はいろいろ模索中ですね?」と言うと、「それがね、模索っていうほど重たくもないんですよ」と、自分の置かれている状況をなるべく正確に、丁寧に描写しようとする。

「本番に向けて、お客さんに喜んでいただきたい思いはありつつも、今は岩井さんを喜ばせたくて稽古を重ねている感じです。岩井さんの理想に少しでも近づけるようになりたいなって思っていますが、岩井さんの理想はスタッフさんも演者も自由な発想で縛られないことなのかもと思っています。だから、今の僕の情緒を表現するなら、『困ったな(笑)』がいちばん正しい。でも、気持ちが動いている分、楽しさもあるんですよね」

 2年前の秋、藤井さんは、岩井さんがプロデュースする「いきなり本読み!」という舞台に出演した。上演される演目は当日まで明かされず、本番のステージ上で、初めて台本を広げ、岩井さんが決めた役を演じる人気シリーズだ。

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