※写真はイメージです (GettyImages)
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 全国の高校で今年度から「総合的な探究の時間」という授業が必修科目になった。知識や問題の解き方を学ぶ「受け身」の授業ではなく、自分で課題を設定して情報の収集・分析から発表までこなす内容で、まさに「探究心」を育てる狙いだ。探究活動の成果で受験できる大学も増えている。ただ、教育現場では戸惑いもあるようだ。

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 神奈川県横須賀市にある私立三浦学苑高等学校は、10年ほど前から自ら問いを立てられるようになることをテーマに「探究」の授業に取り組んできた。大学と組んでディズニーの新商品を開発したり、学生団体を招いてSDGsをテーマとした講演を開いたり、生徒の“探究心”をくすぐる仕掛けを施してきた。生徒自身が探究したいテーマに沿って「アクションプラン」を考えるなど、自主性も尊重している。

 ただ授業の進め方については、教員・生徒の双方の模索が続いている。「探究」の授業を担当する野桜慎二教頭が言う。

「ふだんの授業では、教師はその名のとおり『ティーチする』(教える)ことが中心的な役割です。一方、探究活動のように生徒たちが自分で調べて発表するタイプの授業では、生徒からやりたいことが出てくるのを待ったり、対話を通じて働きかけを行ったりすることが必要です。いわゆるファシリテーションのスキルが、まだ教師側に不足しています。これまで講義形式の授業に慣れていたこともあって、生徒の側も自分たちから動いていくことにまだまだ不慣れな状況にあります」

 とはいえ、「探究」の成果は大学入試にも生きている。2021年度の卒業生のうち、4年制大学に進んだのは232人。うち約8割は総合型選抜や学校推薦型選抜での合格だった。

「探究で学ぶ内容が入試にもつながっていることは、生徒も理解しています」。進路指導を担当する佐々木綱衛教諭はこう話す。ただ、「教科としての重要性は意識しつつ、一方で実際に何をどう考えていけばいいのか、まだわからない状態なのだと思います」とも語り、より内容の深い授業にするための「探究」も欠かせないようだ。

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