新潟日報は2022年3月25日、2面の全面広告を使って「にいがた鮭プロジェクト」をアピールした。オンリーワン、ナンバーワンを目指す新潟の企業と県を出る若者をつなぐことからプロジェクトは始まっている
新潟日報は2022年3月25日、2面の全面広告を使って「にいがた鮭プロジェクト」をアピールした。オンリーワン、ナンバーワンを目指す新潟の企業と県を出る若者をつなぐことからプロジェクトは始まっている

 新聞社はどこも売上減とともに志望者減に苦しんでいる。

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 新潟の地方紙、新潟日報も2002年には518名のエントリー数をほこったが、以後、年々減り続け、2019年にはついに100人を切り84人の志望者しか集まっていなかった。

 危機感をいだいた経営陣は、それまで50代の男性が一人でやってきた採用担当にかえて、報道畑を歩いてきた岩本潔(1991年入社)と、広告畑でずっとやってきた荒井雅美(1993年入社)を投入する。翌年には、30代前半の倉部未咲(2009年入社)も加わり、この三人が改革に着手することで、志望者数は年々回復し、2023年4月入社のエントリーでは361名の応募者を集めるまでになる。

 今週は新聞社と若い世代をいかにつなぐか、という話。新潟日報は、採用活動の改革を通じて、将来的に花開くであろう事業のヒントまで得ることになるのだ。

 報道部長までやった岩本は、新聞社といえば記者のことだと考えていた。が、それは違うと、それまで記者職のインターンしかなかったものを、広告・販売のインターンも設けようと提案をしたのは、荒井だった。

 そしてインターンの回数もそれまでは、夏1回、冬1回しかやらなかったものを、夏は5回、冬も複数回設けて、できるだけ間口を広げようとした。しかも、営業職であれば、実際の商談の場にインターンの学生をつれていき、ちょっとしたプレゼンをさせるということもやる。

 倉部は支局や報道部で記者をやってきた。しかも子育てをしながら。学生と年齢も近いしよいロールモデルになる。そして、荒井も倉部も、学生の面倒をよくみた。

 たとえば定員20名と発表していたインターンシップがある。そこに40名の応募がくる。会場の場所を増やして全員を受け入れた。

 そして二人とも、岩本がみると、ここまでやるのか、というくらい学生との連絡をその後も絶やさなかった。何かあれば、電話をして近況を話したりする。

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下山進

下山進

1993年コロンビア大学ジャーナリズム・スクール国際報道上級課程修了。文藝春秋で長くノンフィクションの編集者をつとめた。聖心女子大学現代教養学部非常勤講師。2018年より、慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授として「2050年のメディア」をテーマにした調査型の講座を開講、その調査の成果を翌年『2050年のメディア』(文藝春秋、2019年)として上梓した。著書に『アメリカ・ジャーナリズム』(丸善、1995年)、『勝負の分かれ目』(KADOKAWA、2002年)、『アルツハイマー征服』(KADOKAWA、2021年)、『2050年のジャーナリスト』(毎日新聞出版、2021年)。元上智大新聞学科非常勤講師。

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