※写真はイメージです
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 経営者の高齢化が進む中小企業では、後継者がいないということもしばしば。経営したい第三者を引き合わせて、会社を引き継いでもらう取り組みが増えているという。

【写真】支援センターを活用し後継者問題から守られた老舗の銘菓がこちら

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 歌手の福山雅治さんが通った中華料理店が長崎県大村市にある。店主の体調不良で2020年9月に休業したが、22年3月に第三者が営業を引き継いで再開した。福山さんも6月に訪れたという。

「協和飯店」を継いだ浅野慎太郎さん(41)は独立を夢見て、県内の中華料理店で10年ほど働いていた。地元商工会議所の仲介で21年、店主だった下釜末博さん(71)と面会し、店を託された。

「みんなに愛されたお店でした。床がはがれ、内装も油で黄ばんでいましたが、改装でがらりと変えず、以前の雰囲気を残しました」(浅野さん)

 店は賃貸だが、改装費用のほか、厨房備品の買い取りや新規購入など資金の問題は大きかった。「飲食店は給料が安く、独立資金をためきれなかった」(同)という。補助金や商工会議所の推薦状で地元銀行の融資も得て、開業にこぎつけた。

 店には以前の客も戻り、福山さんがラジオ番組で店を紹介してくれた。福山さんのファンなど新規客も増えたという。

 宮崎県美郷町で食料品や日用品などを販売する「やまだ商店」は、親族に後継者がおらず、廃業も考えた。店がなくなることを心配した地元関係者が後継者探しに動いた。

 後継者人材バンクに登録し、紹介を受けたのが江並洋さん(57)。江並さんは自動車ディーラーで、定年後の仕事を探していた。公的金融機関から融資を受け、お店を買い取った。「将来は、グランピングの事業をしたいと思っている。しっかりお金をためたい」(江並さん)と話す。お店の商品も少し増やすなど、営業は順調という。

 江並さんは最近、軽トラックの荷台に載せてキャンピングカーにできるシェルの販売も始めた。建具屋さんに製作を頼み、販売を担当する。

 国内企業で後継者不在の企業の割合は22年に59.9%となり、前年から1.3ポイント上昇した。調査した東京商工リサーチ・情報部の原田三寛部長は「若い経営者に後継者がいないのは当たり前だが、80歳以上で2割以上もいない」と話す。一方、後継者がいるという企業の内訳は、息子など同族継承で約66%、従業員の内部昇進で約17%、外部招聘で約17%。

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