こども政策の強化に関する関係府省会議の様子
こども政策の強化に関する関係府省会議の様子

 永田町の外でも、見逃せない動きが起きている。

 岸田首相が伊勢神宮で少子化対策を高らかに宣言した同日、東京都の小池百合子都知事は都庁職員向けの年頭あいさつで、出生率向上策として都内の0~18歳の子ども全員に一律5千円を毎月支給する案を表明した。

 中身が詰められていない岸田首相の「異次元の少子化対策」に比べ、現金5千円は賛否両論あれど具体的。官邸内は「寝耳に水。小池にやられた!」(官邸関係者)と騒然となったという。都政関係者はこう語る。

「23年度中に12カ月分の6万円を一括振り込みすることで実績を積み、国政に復帰しようという意図ではないか。今年衆院選があれば小池氏は出馬するかもしれない」

 昨夏の参院選前後から、自民、公明、国民民主の連立構想が取りざたされていることから、こんな見立てもささやかれる。

「国政復帰後、以前から関係の近い国民民主党の代表となり、細川護熙元首相のように連立政権の首相として担がれる構想ではないか。日本初の女性首相を諦めてはいないだろう」(自民党長老)

「岸田降ろし」が始まりかねない気配の中、首相は人心のつなぎ留めに必死だ。新年、真っ先に夜会合を共にしたのは二階俊博元幹事長と近い森山裕党選対委員長だった。5日夜、東京・赤坂の日本料理店で、衆院選に向けて「10増10減」を受けた選挙区調整を急ぐよう指示した。6日には安倍派の後任会長を目指す萩生田光一党政調会長と官邸で会い、防衛費増額に伴う増税以外の財源確保策と「異次元の少子化対策」の内容について、党内で検討を進める方針を確認した。

 前出の自民党岸田派幹部は、あくまでも強気な予測を示す。

「首相は今年、勝負をかける。中間層を重視し、分配政策と財政・金融政策の正常化を柱に『キシダノミクス』を進め、6月の『骨太の方針』に少子化対策を盛り込む。それ以降は、いつ解散があってもおかしくない」

 だが、23日に召集された通常国会では野党から引き続き旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との癒着ぶりを追及されるのは必至。岸田首相本人をはじめ松本剛明総務相や岡田直樹沖縄・北方担当相らは政治とカネの疑惑も指摘されている。防戦一方になり支持率がさらに下がれば「岸田降ろし」が始まり、退陣に追い込まれる可能性も否定できない。岸田首相にとって、正念場の一年が始まった。(本誌・村上新太郎)

週刊朝日  2023年2月3日号