西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)さん。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「新年を迎えて」。

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【テーマ】ポイント

(1)ここ数年は新年のテーマを考えることがなくなった

(2)「ナイス・エイジング」を極めることが毎年の方向性に

(3)「ナイス・エイジング」の最終の目標は生と死の統合

 以前は新年になると、その年のテーマを決めたものでした。といっても、元旦に決まることはまずなくて、3月中ぐらいまで、ゆっくりと考えていました。しかし、ここ数年はテーマを考えることがなくなりました。「ナイス・エイジング」を極めようという方向性がはっきりしたからです。そして、毎年、ナイス・エイジングについて、その定義を再検討することにしています。

 今年の定義は以下のようなものです。

「老化と死とをそれとして認め、受け容れた上で、楽しく抵抗しながら、自分なりの養生を果たしていき、生と死の統合を目指す」

 この定義に沿って、最近の自分を見つめ直してみます。まず、老化をそれとして認めていますので、講演中に人名が出てこなくても、何とも思いません。10分もすると、自然に思い出します。死についても、80歳を超えてから、ごく身近になりました。時には、このまま死んでもいいかなと思うこともあります。受け容れの幅が間違いなく大きくなっています。

 楽しく抵抗するというのは、無理しなくていいということです。老化や死を頑なに拒むのではなく、「まあいいか、でもちょっと抵抗してみようか」といった感じです。だから、その抵抗が楽しくなります。私は骨を脆弱化させないために、ウイスキーのチェイサーとして昆布汁を飲んでいますが、これが老化への抵抗につながるかもしれないと思うとうれしくなります。毎朝の太極拳も、それ自体が大好きでやっているのですが、毎朝続けることによって、下半身が丈夫になってきているという実感があります。そう感じると、やりがいが増すのです。私はやっていませんが、ボケ防止のために新しい勉強を始めるなんていうのは、人生に彩りを加えますよね。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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