山椒の実がゴロゴロ入った「ちりめんマゴット」(TAKEO株式会社提供)
山椒の実がゴロゴロ入った「ちりめんマゴット」(TAKEO株式会社提供)

(3)水分の多い餌を食べる

 ハエは食品廃棄物のような水っぽい餌を好む。日本では年間35万トンのおからが焼却処分されるが、80%が水分で燃焼効率が悪く、多くのCO2が出る。35万トンのおからがあれば3万5千トンのマゴットを生産でき、残渣は肥料として再利用可能だ。

 木下社長は意気込む。

「人間は様々な動物や植物や菌を手なずけてきたが、虫はカイコとハチくらい。衛生管理やアレルギーリスクなど安全性のガイドラインを整備し、昆虫も食材の選択肢として肉や魚と肩を並べられる社会になれば」

 ゆくゆくは虫を扱う企業が協力し合うホールディングスを作り、様々な昆虫の生産、食品開発、環境問題や農業・医療分野への活用などを一挙に手がける……。木下社長は壮大な野望を「昆虫補完計画ですよ」と笑う。

 その第一歩が、昆虫食品を製造・販売するTAKEO(東京都台東区)とタッグを組んで商品化した「ちりめんマゴット」だ。山椒を入れて甘辛く炊いた見た目は、完全にじゃこ。

 恐る恐る口に入れると、味のクセはゼロで、パリパリした食感はほぼ桜エビ。月並みすぎる感想で恐縮だが、しょうゆ風味で普通においしい。食卓で冷や奴やサラダにパラパラとマゴットを振りかける未来、そう遠くないかも。

※週刊朝日 2023年1月27日号