早乙女太一(さおとめたいち)/ 1991年生まれ。大衆演劇「劇団朱雀」の2代目として初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野武監督の「座頭市」に出演。15年の劇団解散以後は、舞台やドラマ、映画などでも活躍。19年に2代目座長として5年ぶりに上演された舞台「劇団朱雀 復活公演」では総合プロデュース、脚本、振り付け、演出を手がけた。2月3日(金)出演映画「仕掛人・藤枝梅安」が公開予定。(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃 ヘアメイク/奥山信次(barrel) スタイリスト/八尾崇文)
早乙女太一(さおとめたいち)/ 1991年生まれ。大衆演劇「劇団朱雀」の2代目として初舞台を踏み、全国で公演を行う。2003年に北野武監督の「座頭市」に出演。15年の劇団解散以後は、舞台やドラマ、映画などでも活躍。19年に2代目座長として5年ぶりに上演された舞台「劇団朱雀 復活公演」では総合プロデュース、脚本、振り付け、演出を手がけた。2月3日(金)出演映画「仕掛人・藤枝梅安」が公開予定。(撮影/写真映像部・戸嶋日菜乃 ヘアメイク/奥山信次(barrel) スタイリスト/八尾崇文)

「2023年は舞台の年にしたい」と言う早乙女太一さん。その幕開けは、シェークスピア「マクベス」原案の舞台「蜘蛛巣城」だ。かつて黒澤明監督映画で三船敏郎さんが演じた武将役に挑む早乙女さんに、舞台への意気込みを聞いた。

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 17歳のときの彼をインタビューしたことがある。無口なのに不思議と堂々としていて、ステージという戦いの場に挑む前の“無の境地”のようなものを感じさせる、独特の存在感を持つ少年だった。大衆演劇「劇団朱雀」の2代目として4歳で初舞台を踏んだ彼は、北野武監督の「座頭市」で広く注目を集め、その約6年後に「劇団☆新感線」の「蛮幽鬼」に出演した。「14年ぶりのインタビューなんです」と伝えると、「本当に、全然しゃべれなかった頃ですよね。すみません。ご迷惑をおかけしたでしょう」と言って小さく頭を下げた。少年は、いつしか立派な青年になっていたが、当時から感じられた透明感のようなものはそのままだった。

 2月末からKAAT神奈川芸術劇場で上演される舞台「蜘蛛巣城」は、黒澤明監督の傑作映画を舞台化。シェークスピアの4大悲劇の一つである「マクベス」を、世界のクロサワが日本の戦国時代に翻案し、能・狂言の様式を応用しながら戦国スペクタクル作品へと昇華した作品だ。早乙女さんはこの舞台で、主人公の鷲津武時を演じる。演出は、人間の機微を丁寧に描くことで定評のある赤堀雅秋さんだ。早乙女さんは、6年前に赤堀さんの「世界」という舞台に出演したことがあり、「赤堀さんの演出で神奈川芸術劇場に立てることに魅力を感じたんです」と、出演の動機を語った。

「当時は着飾った役を演じることが多かった僕が、身近にあるリアルな世界でお芝居をやらせてもらえたことが新鮮でしたし、赤堀さんが描き出す人間像がとても繊細で、作品づくりの時間も全部含めて、現代劇を学ぶためのいい経験になりました。またご一緒したいと思い続けて、6年越しで願いがかなった感じです」

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