ボクシングからは遠ざかっているが、今は空手に取り組んでいるという大和武士さん
ボクシングからは遠ざかっているが、今は空手に取り組んでいるという大和武士さん

 プロボクシングの日本ミドル級王者から俳優に転身し、日本アカデミー賞・新人俳優賞受賞、任きょう映画、Vシネマで人気を博し……。多くの栄光と華やかな暮らしが一転、2度の逮捕で転落の人生を歩んだ大和武士さん(57)。表舞台からは姿を消したが、その後はい上がり、現在、「今が一番幸せかも」と思えるようになった。今に至る人生に何があったのか。

【写真】大和さんが日本ミドル級王座を獲得した現役ボクサーの時の様子はこちら

 小田急線・代々木八幡駅前から原宿方向へ抜ける商店街の途中にある、しゃぶしゃぶ料理屋の「花咲じいさんHACHIMAN」。

 記者が訪ねると、濃紺の作務衣を着た大和さんが、厨房(ちゅうぼう)で仕込みの真っ最中だった。オーナー兼料理人。それが今の肩書だ。

「ウチのしゃぶしゃぶは、上質のかつお節と昆布をたっぷり使った特製出汁(だし)に牛肉を潜らせて味わう“出汁しゃぶ”スタイルが特徴です。牛肉のうまみに出汁の風味が加わり、すっごくうまい」

 看板メニューの「しゃぶしゃぶセット」は、ご飯と茶わん蒸しが付いてランチタイムが1500円、夜はこれがボリュームアップしてコースで4千円(いずれも税別)。

 なぜ、しゃぶしゃぶ店なのか聞くと、

「シャブ(覚醒剤)で捕まったから、しゃぶしゃぶでリベンジしようと思ったんですよ」。

 大和さんはそう言ってニヤリ。

 もちろんジョークだが、ルーツは義兄が渋谷駅の近くで経営していた創作和食料理店にある。再開発で2018年10月に閉店したが、大和さんは直前の1年間、そこでみっちりと修業し、独立したのだ。

 19年の11月4日にオープンした。

「おかげ様でオープン当初は、俺のファンとかボクシング、Vシネマ関係の友達、それに渋谷時代のおなじみさんがよく来てくれました。想定以上でしたよ」

 だが20年1月末、新型コロナの感染拡大でいきなり逆風にさらされた。

「営業自粛に始まり、緊急事態宣言とまん防(まん延防止等重点措置)の繰り返し。雇用調整金や(感染拡大防止)協力金で一時的にしのいだものの、この3年近くは散々な状態でした。ようやく昨年10月くらいから少しずつ客数が上向いてきた感じですね」

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