松下玲子(まつしたれいこ)/ 愛知県生まれ。1993年に実践女子大を卒業後、大手飲料会社勤務や東京都議などを経て2017年の武蔵野市長選で当選、市政初の女性市長に。21年に再選。
松下玲子(まつしたれいこ)/ 愛知県生まれ。1993年に実践女子大を卒業後、大手飲料会社勤務や東京都議などを経て2017年の武蔵野市長選で当選、市政初の女性市長に。21年に再選。

■市民参加の手段としての選択肢

 外国人が参加できる住民投票制度を持つ自治体は全国で40以上。ただし大半は「永住者」や「在住3年以上」などの条件がある。在住3カ月以上で日本人とほぼ同じように投票できる自治体には神奈川県逗子市と大阪府豊中市の例がある。

 逗子や豊中では議決の際に騒ぎになったり、何か問題が起きたりはなかったと聞いています。市が無作為で市民に行ったアンケートでは、7割が国籍を問わないことに賛成していました。抗議の声は主に市外の人から来ました。自分たちのまちのことは自分たちで決めることが自治なのに、よそのまちの人たちから抗議を受けたのは残念ですね。

──条例案が成立すれば、市民の暮らしはどう変わるのでしょう。

 市民参加の手段の一つとして選択肢が増えます。市長と議会による代議制民主主義が機能していれば住民投票が起こることは基本的にないと考えていますが、仮に私が武蔵野市だけ税金を上げようとした場合、それはおかしいと住民が声を上げることができます。

──そうした考えに市長が至った経緯は?

 私だけじゃなく、みんなで決めたことです。武蔵野市では、私が選挙公約で掲げたことも、当選後に長期計画に位置づけ実現していく。住民投票条例案も前の市長から引き継いで進めてきました。私個人が勝手にやっていると思われるのは心外ですね。

 働き手不足が年々深刻になり、政府主導で移民の活用が提唱される一方、入国管理施設での外国人に対する扱いやヘイトスピーチの問題など、「多文化共生」に向けて課題は多い。

 人権をどう守っていくかですよね。海外で暮らす日本人も多くいて、同じ目に遭っていたらどう思われますか。日本では人口が減り、22年に生まれてくる子供も80万人を切ると言われています。働き手や介護人材が不足するなか、国も多文化共生を推進しようとしているにもかかわらず、国籍にこだわることにどんな意味があるのか。一人ひとりが真剣に考える時期に来ていると思います。

(構成/本誌・佐賀旭)

週刊朝日  2023年1月6-13日合併号