『週刊朝日』の書評欄「週刊図書館」の執筆陣28人のうち14人の方々に、2022年に発売された作品の中から「私のベスト3」として、おすすめの3冊をそれぞれ選んでいただきました。

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■ノンフィクション作家・足立倫行

(1)『韓国併合』(森万佑子 中公新書)

(2)『明治維新と神代三陵』(窪壮一朗 法藏館)

(3)『転生』(牧久 小学館)

 今日の元徴用工・慰安婦問題は日本と韓国の歴史認識のズレから生じている。(1)は大韓帝国の成立から崩壊まで、歴史認識のズレの源流を、最新の研究から掘り起こす。現代人必読の労作だ。明治維新は近代化の一方、王政復古により「神武創業之始」を目指した復古的改革でもあった。(2)は、後に国家神道へと収斂する明治初期の宗教行政史を、「土台は薩摩藩」と解明した刺激的な一冊。

■文芸評論家・大矢博子

(1)『異常(アノマリー)』(H・ル・テリエ著、加藤かおり訳 早川書房)

(2)『はぐれ鴉』(赤神諒 集英社)

(3)『文にあたる』(牟田都子 亜紀書房)

 (1)はフランスのSFミステリー。群像劇から始まったと思いきや、予想のはるか斜め上を行く展開に呆然。(2)は豊後国を舞台にしたお家騒動+仇討ち+歴史ミステリー。あれもこれも伏線だったのかとこれまた呆然。(3)は校正者のエッセイ集。校正・校閲のエピソードがてんこ盛りで、想像を超えるたいへんな仕事にまたまた呆然。私の拙い原稿が雑誌に載るのも校正さんのおかげです。以上呆然の3冊。

■作家・片岡義男

(1)『地形を感じる地図アプリ スーパー地形公式ガイドブック』(杉本智彦 山と溪谷社)

(2)『東京DEEPタイムスリップ 1984⇔2022』(善本喜一郎 河出書房新社)

(3)『ニュータウンに住み続ける 人間の居る場所3』(三浦展編 而立書房)

 題名に「江戸」の文字のある本を中古で買い始めて数年になる。300冊はあるだろうか。これに新本が加わると江戸の闇は深まる。最近では「東京」に広がって収拾がつかない。東京への興味を地形から入った僕は東京地形本の定番として(1)を推すことにした。(2)は多忙にかまけてほとんど知らない時代を詳しく知ることが出来るし、(3)は近よることすらためらう僕に、ニュータウンの謎を解いてくれる。

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