筧利夫(かけいとしお)/ 1962年生まれ。静岡県出身。大阪芸術大学在学中に「劇団☆新感線」に、85年に鴻上尚史主宰の「第三舞台」に参加。2011年の解散まで、ほぼ全ての作品に出演。舞台、映画、ドラマ、情報番組やバラエティーなど幅広く活躍。主な映画出演作は、「踊る大捜査線」シリーズ、「THE NEXT GENERATION-パトレイバー-」など。現在、劇場版「Dr.コトー診療所」が全国公開中。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)
筧利夫(かけいとしお)/ 1962年生まれ。静岡県出身。大阪芸術大学在学中に「劇団☆新感線」に、85年に鴻上尚史主宰の「第三舞台」に参加。2011年の解散まで、ほぼ全ての作品に出演。舞台、映画、ドラマ、情報番組やバラエティーなど幅広く活躍。主な映画出演作は、「踊る大捜査線」シリーズ、「THE NEXT GENERATION-パトレイバー-」など。現在、劇場版「Dr.コトー診療所」が全国公開中。(撮影/写真映像部・高橋奈緒)

「やりすぎ」は褒め言葉。多くの舞台人から、「自由にやっていい」と言われて育った筧利夫さんは、「時代劇は出るだけで得」と話す。26歳下の監督が撮った時代劇で感じた役得とは?

【写真】筧利夫さんのソロショットの続きや「近江商人、走る!」の場面カットはこちら

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 俳優にとって、映画の撮影は我慢の連続だという。寒さや暑さに耐え、長台詞を覚えていったのに、それが結局使われなかった理不尽に耐える。それ以外にも、さまざまな忍耐を強いられるわけだが、筧さんには、「役者にストレスのかかっている状況のほうが、観るほうとしては面白い」という持論がある。ジャンルとして、特に負荷がかかると感じているのが時代劇だ。

「時代劇は、圧倒的に支度に手間がかかるんですよ。ちょんまげなんて、準備するのに1時間ぐらいかかりますし、一日着物にちょんまげ姿で過ごすのは、現代人のわれわれにとっては相当きついです。刀を差して袴をはいて、冬でも裸足だから、めちゃくちゃ寒いし。しかも、時代劇のセットの中は、道が舗装されていないから埃がすごい。撮影後にうがいなんかしようものなら、吐き出す水が茶色で、血でも吐いたんじゃないかとビックリします(笑)。そこまで大変だからこそ、時代劇での芝居は、役者にとっては得なことも多いんです」

 年末に公開される映画「近江商人、走る!」は、江戸時代を舞台に、大津にある米問屋に勤める丁稚が、悪徳奉行の謀略にもめげず新たな米の取引方法を思いつき、米問屋の借金を返すべく奔走する新感覚のビジネス時代劇だ。筧さんは米問屋・大善屋の主人を演じた。

「時代劇という設定以外は、“普通”の人物でしたね。米問屋の主人で、普通に従業員思いで、ちゃんと商売をやっている立派な人。特にこれといった癖もない。そういう役のオファーが今まであんまりなかったんです。ただ、時代劇のときはなるべく手間がかからないほうがいいので、最初に、『髪形は何?』って聞きましたけど(笑)」

 幸いなことに、「近江商人、走る!」では、ちょんまげのカツラを被る必要はなく、頭巾を被るスタイルだった。

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