※写真はイメージです (GettyImages)
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 コロナ禍の自粛ムードが徐々に緩和され、今度の年末年始は久しぶりに家族で集まって正月を過ごすという人も多いだろう。そんな中、ちらほらと聞こえてくるのが「正月ブルー」や「帰省ブルー」にまつわるホンネ話。聞けば、コロナ禍を経たからこそ見えたこともあるようで──。

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「帰省は嬉しいけど、正直なところ準備が面倒で……」

 東海地方在住のキヨエさん(仮名・68歳)。今度の年末年始は、3年ぶりに子どもや孫が帰省し、賑やかに正月を迎える予定だ。無論、楽しみな気持ちも大きいのだが、実はそれと同じぐらい感じているのが「面倒だな」という気持ち。それが「楽しみ」よりも勝っていて、自分でも少し戸惑っているという。

 キヨエさんには3人の子どもがおり、それぞれ家庭を持っている。孫は全部で6人。一番上が小学3年生、下は3歳とまだまだ幼い孫たちだ。コロナ禍以前は、正月といえば大晦日にキヨエさんのいる実家に子どもや孫が集まり、年越しを挟んで2~3泊して帰るのがお決まりだった。

 キヨエさんは、食事の支度に始まり、家族全員分の冬用布団の準備、大掃除に後片付けと、総勢10人を超える家族が集まる正月は、てんてこ舞い。だが普段は夫婦二人で静かに暮らすわが家に、子どもや孫の声が賑やかに響く年末年始が好きだったし、大きな楽しみでもあった。

 そうしたお決まりの過ごし方を、突如変えざるを得なくなったコロナ禍。子どもたちは年末年始の帰省を控え、それぞれの家で2度の正月を過ごした。

「それがもう、楽で楽で、解放感に満ちていたんです」とキヨエさん。キヨエさんは、実に新婚以来の、夫婦二人だけで正月を過ごした。厳密に言えば、新婚の時期には互いの実家を行き来して過ごしていたから、純粋に夫婦二人だけで過ごす正月は初めてとも言える。最初は夫婦だけで過ごす正月なんて寂しいと思いきや、これが思いがけず良かったという。

 聞けば、二人で過ごす正月について夫と話し、夫婦二人だけだから「いつもの延長線上でいいよね」という話になった。毎年しっかり用意していたおせち料理やご馳走も、二人ならそんなに食べられないから、用意するのは黒豆や煮しめなどを少しだけ。元日の朝のみ雑煮を作り、あとはデパートでつまみを買ったり、鍋をつついたり、好きなものを好きな分だけ、自分たちのペースで食べる。おせち料理やご馳走に加え、孫用にピザを作ったりケーキを焼いたりしていたいつもの正月に比べたら、食事の準備だけで格段に楽だ。

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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