渡辺徹さん
渡辺徹さん

 俳優やタレントとして幅広く活躍した渡辺徹さんが11月28日、敗血症のため亡くなった。昨年、俳優生活40周年を迎え、まだ61歳という若さだった。妻の榊原郁恵さんとは、俳優とアイドルという人気者同士の結婚で、当時、大きな話題に。おしどり夫婦として知られた2人が結婚30年の節目となった2017年に、週刊朝日のインタビューにそろって答えた。2人が出会い、互いに感じたこととは……。内容を一部抜粋して紹介する。

【写真】妻の榊原郁恵さんとはおしどり夫婦で知られた

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――もともと渡辺さんは榊原さんの大ファンだったそうで?

夫:まさか自分が役者になるなんて、思ってませんでした。高校3年まで、弁護士になるつもりだった。

妻:私もそう。ホリプロタレントスカウトキャラバンで優勝するまで、幼稚園の先生になるつもりでしたね。

夫:人形浄瑠璃しか芸事の経験のない女子高生だったのに……(笑)。

妻:そう! 地元相模原に伝わる「相模人形芝居」を保存しようっていう先輩たちが、人形浄瑠璃の同好会をやっていて、面白そうだなと。だからスカウトキャラバンへの応募は、ほぼ、思い付き。その割には周囲の反対も押し切って。何だったんだろうな、あのパワーは。

夫:僕も進路を決める段になって考えたんですよ。確たる目標があって弁護士になりたかったわけじゃない。生徒会長として、県内の他校を巻き込んでの活動をしてたんですが、その経験がすごく充実していて。「何か、みんなで作り上げられる仕事がいい」って思うようになった。

妻:それでお芝居へ?

夫:一度だけ、地元のアマチュア劇団の手伝いをしたことがあったんだよ。老人ホームへの慰問だったんだけど、終わってみたら、おじいちゃんおばあちゃんが涙流してる。芝居の力ってすごいなあと。

妻:それでよく、文学座受かったねえ。

夫:もちろん、学校からも親からも大反対されましたよ。僕の父親はね、流しをやっていたんです。アコーディオンひとつで雨の日も風の日も、一曲20円ぐらいの商売で僕を育ててくれた。だから芸事の厳しさを嫌というほど知っていたんでしょう。そんな思い付きで役者を目指すなんてって、それは怒ってましたね。

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五郎丸さん見てもわかるじゃない