東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、W杯ドイツ戦でサッカー日本代表が起こした逆転劇について、野球界でも参考になる部分があると指摘する。

【写真】ドイツを破り、選手を出迎える森保一監督

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 サッカー界のビッグイベント、ワールドカップ(W杯)のカタール大会が始まった。日本代表は11月23日の夜にドイツ代表と対戦した。W杯優勝回数4度を誇る強豪に対して、2−1の逆転勝利。「ベスト8」を目標に置くチームにとって、これは通過点でしかないかもしれないが、最高の一歩をしるしてくれた。

 私はサッカーに詳しくないので、システム変更とか、森保一監督の交代のカードがいかに効果的だったかを論ずることはできない。ただ、「自分たちの武器は何なのか」「相手より勝っている部分は何か」「その部分を最大化するためには」をずっと考えてきたのだと思う。前半、苦戦していても、後半で見違えるようなチームとなった。これは選手、そしてチーム全体に、そもそも自信がなければできないことだ。

 野球にも五輪やWBCなど国際大会がある。日本は常に優勝候補の一角に挙げられるが、技術力が上のチームが常に勝つわけではない。どの選手が相手に対して上回れるか、どういった起用をすれば、その特長を最大効率で発揮できるのか。そういったことを考えてきたチームに差は埋められてしまう。今回の日本とドイツの「個」の戦力差はあったかもしれないが、チーム力をいい方向に導けば逆転できる。同じチームスポーツとして、野球界も大いに参考にしなければならない。

 来年3月のWBCに、エンゼルスの大谷翔平も参加を表明した。たとえ投手として投げる機会が限られたとしても、オリックスの山本由伸、ロッテの佐々木朗希といった投手に、メジャー球の扱い、決戦の地となるマイアミの気候、球種でもどう投げたらどういった変化をするのかの引き出しなど、言えることはたくさんある。もちろんDHとして出場が見込まれる打者としては、相手にとって大きな脅威となる。

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東尾修

東尾修(ひがしお・おさむ)/1950年生まれ。69年に西鉄ライオンズに入団し、西武時代までライオンズのエースとして活躍。通算251勝247敗23セーブ。与死球165は歴代最多。西武監督時代(95~2001年)に2度リーグ優勝。

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