※写真はイメージです (GettyImages)
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 両親の介護が必要になった時、何をどうしたらいいのだろう。試行錯誤しながら認知症の両親の介護を続けて4年目の本誌女性記者(53)が、知っておきたい介護保険の基本に触れながら、自らの体験をもとに必要な知識や心構えを考える。

【図で確認】アルツハイマー型認知症の進行症状がこちら

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第1回【母のハンドタオル】

「誰も、私の気持ちはわからない」

 悲しそうにこう母がつぶやいた。介護を始めてから何度も聞いてきた言葉。そんな思いをさせないために介護について学び、自分なりに努力を続けてきた。記者の経験が読者の方の役に立つことを願って、反省点を含めて書いていきたい。

 記者の母(83)は還暦を過ぎたあたりから加齢黄斑変性症で徐々に目が見えなくなってきた。75歳頃、自宅の階段から落ちて腰椎(ようつい)圧迫骨折をしてからは杖が手放せなくなったが、そんなハンディをものともせず、訪問ヘルパーの助けを借りながら、大好きな歌やおしゃべり、買い物を楽しんでいた。食いしん坊で「病院の帰りは『万世』のハンバーグ」が口癖。「『アスター』に行きたいわ」と中華も好きだった。

 しかし、3年前に生活は一変する。新宿で親友とランチを食べた帰りだった。お土産を入れたキャリーバッグが重かったのだろう。都内の自宅の玄関の小さな段差につまずき激しく転倒し、頭を強打。意識を失い、通行人の助けで救急搬送された。忘れもしない2019年11月16日。そこから母の人生が、両親の暮らしが、大きく変わっていった。

 母は寝ているか横になっている時間が一気に増えた。室内を移動する時もよろめき、すぐに転倒する。一度転べば一人では起き上がれないので深夜の転倒は救急車のお世話になった。老老介護の二人暮らし。6歳年上の夫は認知症で要介護3。2人の娘(記者と姉)は結婚して離れて暮らしている。

 食事をほとんどとらなくなった母はみるみる痩せていき、食事中もうとうとする時間が増えた。

 これまで週に数回だった訪問ヘルパーは毎日となり、外出ができなくなったため在宅訪問医に切り替え、月に2度の診察を受けるようにした。

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