ノルウェーのルイーセ王女と婚約者のベレット氏(ロイター/アフロ)
ノルウェーのルイーセ王女と婚約者のベレット氏(ロイター/アフロ)

 ノルウェー国王ハーラル5世(85)の第1子マッタ・ルイーセ王女(51)が6月、米国人の自称シャーマン(霊媒師)デュレク・ベレット氏(48)と婚約した。ノルウェーは1990年の王位継承に関する憲法改正で長子優先としたものの、経過措置として71~89年生まれまでは男子優先だ。したがって71年生まれのルイーセ王女よりも、2歳年下の弟ホーコン王太子が継承順位は高い。王太子には2人の子どもがいるため、ルイーセ王女はその下の4位にとどまる。

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 彼女は以前よりスピリチュアルな事象に関心があり、天使や死者と交信できるとする。2002年に作家アリ・ベーン氏と結婚し、3人の王女に恵まれた。だが離婚後、ベーン氏は19年のクリスマスに47歳で自死した。その年、ルイーセ王女はベレット氏との交際を公にしていた。

ハリー王子のポロを観戦するメーガン妃(Backgrid/アフロ)
ハリー王子のポロを観戦するメーガン妃(Backgrid/アフロ)

 そんな王女の婚約に国民の批判が集まった。ベレット氏は、前世ではエジプトのファラオで、王女は女王だったと主張。著書『スピリット・ハッキング』には、「子どもがガンになるのは、彼らが望むからだ」と記して物議を醸した。また、ベレット氏とのバーチャル個人セッションは1時間で約20万円。新型コロナウィルスの感染から救うとして、一つ約3万円のメダルも販売する。果ては婚約を機に講演ツアー「王女とシャーマン」を始めたため、国内では「詐欺師」との非難が集中している。だが彼は「ノルウェーに来た時ほど人種差別を経験したことはない」と反発した。

 婚約発表から半年も経たない11月、王女は国王から称号の保持は許されたものの、公務から引退するとした。「代替医療」の事業に専念するため、ベレット氏の出身地カリフォルニア州に移住すると伝えられている。

マデレーン王女一家(TT News Agency/アフロ)
マデレーン王女一家(TT News Agency/アフロ)

 このところ、世界の王室メンバーの米国行きが目立つ。英国のデイリー・メール紙はルイーセ王女を巡る騒動を「ノルウェー版メグジット」と名付けた。約2年半前に米国に移住したハリー王子とメーガン妃が英王室を離脱した例になぞらえたものだ。小室圭さんと結婚した眞子さんもニューヨークに渡って1年以上がたつ。スウェーデン王室でも、グスタフ国王の次女マデレーン王女(40)が英国系米国人の夫と子どもたちとフロリダで暮らす。国王は19年10月に王室のスリム化に着手。子どもたちは正式メンバーから外れたが、「自由に生きられる」と王女は歓迎している。

 王室離脱組が米国に向かうのは、やはり母国にはない自由を求めてか。ハリー王子が年明けに出す回顧録『スペア』のタイトルが示唆するように、君主の長男や長女の「二番手」として支える弟妹は、自分のアイデンティティーをいかに確立するべきなのだろうか。ウィリアム皇太子夫妻(共に40)は早くも、シャーロット王女(7)とルイ王子(4)の将来を案じる。2人を王室メンバーの枠にとどめず、自分自身の生き方を模索するよう励ます日々だ。

(ジャーナリスト・多賀幹子)

※週刊朝日オリジナル記事

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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