※写真はイメージです (GettyImages)
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『図書館の日本文化史』(高山正也、ちくま新書 1012円・税込み)の書評をお届けする。

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書籍の公共圏」としての図書館が、日本でいかにして発展してきたかがテーマだが、そこには自ずと、書籍を成立させている文字、そのコンテンツとしての文学や学問、ひいてはそれを媒介とした教育といった問題が、分かちがたくからみついてくる。その意味では、本書は図書館を軸として、日本における「知」のあり方がいかに変遷してきたかを辿る総合的な文化史である。

 石上宅嗣(いそのかみのやかつぐ)が創建した日本最古の図書館「芸亭(うんてい)」以来、わが国に脈々と受け継がれてきた「文庫」の伝統が、明治維新以降導入された図書館という概念にどう接ぎ木されていったのか。戦後、GHQの企図のもとに広まっていった米国式図書館が日本の図書館行政にもたらした功罪とは何か。

 司書の養成に遅れが見られること、デジタル時代の図書館はどうあるべきかなど、未来志向の問題提起も傾聴に値する。(平山瑞穂)

週刊朝日  2022年11月25日号