エリザベス女王在位70年を祝う「プラチナ・ジュビリー」のイベントに登場した女王とチャールズ3世、カミラ夫人(6月5日、ロイター/アフロ)
エリザベス女王在位70年を祝う「プラチナ・ジュビリー」のイベントに登場した女王とチャールズ3世、カミラ夫人(6月5日、ロイター/アフロ)

 エリザベス女王が残した“遺言”がまさかの大逆転劇を生んだ。チャールズ3世(74)の妻、カミラ夫人(75)が、女王の鶴の一声で王妃の称号を得たのだ。その背景には、ダイアナ元妃の不幸の元凶とされた彼女の努力と夫の支えがあった。

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「チャールズ皇太子が国王になるとき、カミラ夫人を王妃にしてほしい」

 エリザベス女王が生前語ったこのひと言で、カミラ夫人は女性ロイヤルの最高位に就くことが決まった。ダイアナ元妃がパリで事故死した1997年当時、こんな状況を誰が想像しただろうか。

 国民から「まるでおとぎ話のよう」と称賛されたチャールズ3世とダイアナ元妃の結婚。カミラ夫人はそれを破局に導いた“元凶”として嫌われ続けてきた。不倫が発覚した際、通りすがりの人にパンや卵を投げつけられ、女王からは「性悪女」と吐き捨てられた。

 ダイアナ元妃は「仮面夫婦」のまま結婚生活を続けることを拒否し、女王に「あなたの息子は不倫している」と直談判した。夫フィリップ殿下の浮気の噂に見て見ぬふりを貫いた女王は、元妃にも同じ振る舞いを求めた。チャールズ3世に訴えても「愛人のいない皇太子にはなりたくない」と開き直られ、カミラ夫人に向かい合うと「あなたは世界中の人から愛され、かわいい2人の息子がいる。これ以上何を望むの」と言い返された。元妃は「私はただ夫の愛情がほしいだけ」と答えたが、一笑に付された。「ロットワイラー(一度食いついたら絶対に離さない大型犬)」とは、元妃が夫人に付けたあだ名だ。

 95年、BBCの番組「パノラマ」のインタビューで、ダイアナ元妃は「皆さんの王妃にはなれないが、心の王妃になりたい」と打ち明け、その後わずか2年ほどで36歳の命を散らした。

 チャールズ3世はまもなく再婚を望んだが、国民の反発に配慮した女王が止めに入り、2005年にようやく許可した。さらにダイアナ元妃を追慕する国民感情に慮(おもんぱか)り、夫人を「ウェールズ皇太子妃」と名乗らせずコーンウォール公爵夫人にとどめた。息子が玉座を継ぐときも「王妃」ではなく「国王夫人」と名乗ることも約束した。

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多賀幹子

多賀幹子

お茶の水女子大学文教育学部卒業。東京都生まれ。企業広報誌の編集長を経てジャーナリストに。女性、教育、王室などをテーマに取材。執筆活動のほか、テレビ出演、講演活動などを行う。著書に『英国女王が伝授する70歳からの品格』『親たちの暴走』など

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