日本人に抜けている金融リテラシーが「資産形成」だからといって、そればかりに目を向けていいかというとそうではない。

■50代は折り返し「基礎」から学べ

「金融リテラシーには3本柱があって、資産形成はその一つなんです。ほかの二つは『家計管理』と『ライフプランニング』。家計管理はお金を貯められる家計にしていこうとするものですし、ライフプランニングは将来、どんなイベントがあり、それにはいくら費用がかかるのかを知って、計画的な準備を心がけようとするものです。二つがあって、その先に預貯金を含めた資産形成がある、という位置づけを忘れてはいけません」(同)

 先の金融教育ディレクターの橋本さんは、独自の視点からお金に関する基礎として四つの分野を挙げ、まずそれから学ぶことを提唱している。

「四つとは、お金の価値観、お金を使う、お金を稼ぐ、金銭管理です。とりわけ力を入れているのが『お金の価値観』で、お金自体に価値はなく、生活に必要なものだが便利な道具にすぎないことをいつも強調しています」

 道具だとすると、それを増やすことが人生の目的になるのはおかしいし、それを使いすぎたり使わなかったりするのもおかしいことに気づくという。

「私も若い頃、お金の管理ができなくてずいぶん苦労しました。でも、お金がわかってくると使い方や貯め方が変わってきます。そういう経験もあるからこそ基礎を重視しているのです」(橋本さん)

 人生100年時代を迎え、「50代」はまだ折り返し点を過ぎたばかりだ。金融庁が金融リテラシーを重視することをきっかけに、一からお金を学んでみてはいかがか。(本誌・首藤由之)

*1 https://www.fsa.go.jp/news/25/sonota/20131129-1/01.pdf

*2 https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/literacy/pdf/map.pdf

*3 https://www.fsa.go.jp/news/r3/sonota/20220317/20220317.html

*4 https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/e-learning/

週刊朝日  2022年11月25日号

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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