世に専門店は数多(あまた)あれど、日本に、いや世界にひとつではと思わせる、不思議な店も存在する。どんな店主が何をきっかけに開き、どんな客が訪れるのか──。アッと驚くその“沼”に、気づけばあなたもハマっているかも?
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■仮面専門店
用途不明の“人面”が売れ筋
舞踏家の大川原脩平さんが、仮面作家との出会いを機に、8年前に開業。200点ほどを取り扱う。売れ筋の商品は、“人面”。9万8千円(税込み。以下同)と高額ながら、海外からの注文が多く、月に数個は売れるという。「正直、誰が何の目的で買っているかわからない(笑)」と大川原さん。そのほかの仮面の購入理由は、「ハロウィーンなどの仮装用」「仮面舞踏会に誘われて」「家事のときに気持ちを切り替えるため」と幅広い。顔を出したくない作家や声優がYouTubeなどに出るため、オーダーメイドすることもあるという。
仮面屋おもて
住所:東京都墨田区京島3‐20‐5/営業時間:毎週土・日12:00~18:00/定休日:不定
■ルーペ専門店
創業約30年、500種類が並ぶ
虫眼鏡型、眼鏡型、置き型など、千円程度のものから、約7万円のものまで、約500種類のルーペがところせましと並ぶ。もとはルーペの製造会社。買える場所がわからない、という客の声に応えて約30年前に開店した。老眼に悩む人のほか、電子機器の検品やまつげエクステ(付けまつげ)などの細かい作業を仕事とする人も訪れる。店主の寺崎素弘さんはルーペの魅力を「見えなかったものが見える喜びを味わえること」と語る。「『生きがいの読書を続けられる』『縫製の仕事を辞めずにすむ』と言ってもらえたときはやっていてよかったなと思いました」
ルーペハウス
住所:東京都墨田区錦糸3‐9‐6/営業時間:10:00~18:00/定休日:日・祝
■指人形専門店
「50年後の冬ソナ」人形劇が目玉
店主の露木光明さんは1996年に50歳で指人形の制作を始めた。主宰していた子ども向けの工作教室がきっかけだった。有名人や若者の人形もあるが、多くは老人を模している。「老人のほうが不思議と味のある顔になるんです」と露木さんは愛おしそうに人形を見つめる。店で披露される指人形劇も見物だ(600円)。人気の演目は「50年後の冬のソナタ」。年を取った「ヨン様」の姿は……。4万円で制作してもらえる似顔人形も贈り物に人気。「はじめは会社員と並行してやっていましたが、60歳で本業にできた。それからの人生が一番楽しいですね」
指人形笑吉
住所:東京都台東区谷中3‐2‐6/営業時間:10:00~18:00/定休日:月・火(祝は営業)
(取材・文/本誌・唐澤俊介)
※週刊朝日 2022年11月18日号