米バイデン政権の足元が揺らぎつつある。政権に対する“通信簿”ともいわれる中間選挙で、野党・共和党が優勢だからだ。トランプ前大統領はこの選挙を利用して影響力の強化をめざすが、そう簡単にはいかないようだ。内向きとなった米国に岸田文雄政権はどう対応するのか。政治ジャーナリストの星浩氏がレポートする。

*  *  *

 米国の中間選挙が8日、投開票される。バイデン大統領の2年間の実績が評価される選挙だ。連邦議会の下院は435議席すべてが改選され、与党民主党は過半数を割りそうな情勢だ。100議席のうち35議席が改選となる上院は、民主、共和両党のデッドヒート。経済や外交で対外協力に消極的な共和党が下院で多数を占めれば、米国が「内向き」の傾向を強めることは間違いない。日本の同盟国が「内にこもる」ことで、岸田政権にも難問が突きつけられそうだ。

 米国の政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス(RCP)」によると、中間選挙のうち下院は共和党が堅調で過半数(218議席)を上回る225議席を確保し、さらに上乗せする勢い。民主党はこれまで過半数を占めていたが、200議席に届かない情勢だ。

 上院は現在、民主、共和両党が各50議席で同数。民主党のハリス副大統領が議長を務めており、両党で賛否同数になった場合、ハリス議長の投票で民主党が多数になる。今回改選されるのは共和党21議席、民主党14議席で接戦が繰り広げられた。

 この中間選挙では当初、コロナ禍やロシア・ウクライナ戦争の影響を受けたインフレの進行でバイデン政権への批判が強まり、上下両院とも共和党が優勢だった。その後、今夏になって民主党が巻き返した。政権がインフレ抑制法などの重要法を成立させたことに加え、「中絶問題」が追い風となった。トランプ政権で保守派の判事が多数となった連邦最高裁が妊娠中絶の権利を認めた従来の判決を覆したため、中絶を禁止する州の法律が認められることになった。共和党知事の州を中心に中絶が原則禁止とされ、「女性の選択」を求める有権者が反発。中絶の権利を重視する民主党が勢いづいたのである。

次のページ