※写真はイメージです (GettyImages)
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 新型コロナウイルスの感染者数が下げ止まり、「第8波」が訪れる可能性が高いというが、私たちは「コロナ慣れ」という状況に陥っている。大阪大学大学院・人間科学研究科の三浦麻子教授にコロナ慣れのメリットとデメリットを聞いた。

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 新型コロナウイルスの感染拡大が世界規模で始まった2020年1月から、感染禍の社会心理について1200人を対象としたパネル調査を行っています。その中に、コロナの流行への関心を1(全く関心がない)から7(非常に関心がある)まで、当てはまるものを一つ選んでもらう質問があります。

 これまでの結果から、2年前から感染者数は大きく増えた一方、コロナに対する人々の関心は次第に薄らいできたことが明らかになっています。調査が始まった20年1月時点で、関心の平均値は6.22。そこから、最初の緊急事態宣言が初めて発令された4月にかけて、6.71まで数値が伸びました。22年に入り、新規陽性者数はそれ以前より増加していますが、関心の平均値はゆるやかに下がり、直近である9月の平均値は5.53でした。

 背景にあるのは、人々の「コロナ慣れ」でしょう。最初の頃はどんな病気なのかがわからず、「かかったら死んでしまうかもしれない」という恐怖心があった。けれども、どのような病気であるかが知られ、ワクチンなども登場するにつれて「死亡リスクはあっても、さほど高くはない」という認識に変わってきました。

 こうした変化は、この3年間でコロナへの対処策が整ってきた結果であり、決してネガティブに捉える必要はありません。感染拡大初期、県外との往来自粛が呼びかけられ、他県ナンバーの車に石が投げつけられるような事案もあった時期に比べれば、世の中の空気もだいぶ和らいでいます。マスクの着用や、飲み会・旅行の是非をめぐっても、様々な意見があることでしょうが、以前よりも対立が先鋭化することは減ってきたのではないでしょうか。社会には多様な意見を持つ人がいることを前提に、許容できる範囲でお互いを尊重し合っていくべきだと思います。

 この冬に第8波が来るとして、それがどのようなものになるかはわかりませんが、死者数が爆発的に増えるなどこれまでにない悪化がない限り、感染拡大初期のような緊張感を思い出すのは難しいと思います。過度にウイルスを恐れる必要はありませんが、一方で、油断しすぎはよくない。手洗い・消毒など日常的な行動からワクチン接種まで、基本的な感染対策を引き続きしっかり続けることが大切です。

週刊朝日  2022年11月11日号