自宅マンションを売って、地方都市のいい物件に移住するシニアも(写真はイメージです)
自宅マンションを売って、地方都市のいい物件に移住するシニアも(写真はイメージです)

 マンションの高騰が止まらない。新築と横並びで中古も値上がりし、今や買値より「時価」が高いマンションが大都市部にいっぱいある。いわば自宅が儲かっている格好だが、この「儲け」は売却しないと現実のものにならない。「儲け」を活用できるうまい手はあるのか。

【図表】マンション全体が値上がりしている今の状況

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 会員数28万人を誇るマンションの価格情報サイト「住まいサーフィン」には、会員だけが利用できる「自宅査定」というコーナーがある。マンション名や部屋番号、階数など必要事項を登録すると、同サイトが判断するその時点での「中古時価」が表示される。

 例えば、10年前に新築を「5千万円」で購入したマンションの部屋があるとしよう。その査定表示は、こんな感じになる。

「中古時価 8500万円 中古値上がり率 70%」

 エッ、7割も上がっているのか。マンションの価格相場は後でじっくりご紹介するとして、これは別に不思議な数字ではない。

 同サイトの主宰者である沖有人氏が言う。

「価格の上昇だけと関係するものではありませんが、ウチの会員のマンションは現在、平均で『2800万円』の含み益がある状態です」

 東京を中心に都市部のマンションが“前代未聞”の事態を迎えている。中古マンションが思わぬ高値で売れてしまうのだ。

“前代未聞”と言ったのは、記者がひと昔前の「常識」に引っ張られているからだろう。何しろ、「新築マンションは買った瞬間に中古になるから、その段階で2割安になる」などとする“相場観”が広く信じられていた。新築が大量に供給され、中古は見向きもされなかった時代の話である。

 ところが今、特に都市部は全然違う。

「マンションは一にも二にも『立地』です。中古より新築がいいとは言えません。立地が良ければ中古のほうが圧倒的に強い物件がいっぱいあります」(沖氏)

 中古が高くなっているのは、新築マンションが値上がりし続けているからにほかならない。新築に引っ張られる形で同様に値上がりしてきた。

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首藤由之

首藤由之

ニュース週刊誌「AERA」編集委員。特定社会保険労務士、ファイナンシャル・プランナー(CFP🄬)。 リタイアメント・プランニングを中心に、年金など主に人生後半期のマネー関連の記事を執筆している。 著書に『「ねんきん定期便」活用法』『「貯まる人」「殖える人」が当たり前のようにやっている16のマネー 習慣』。

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