室井佑月・作家
室井佑月・作家

 作家・室井佑月氏は、自民党安倍派の行く末を考える。

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 やってしまったな、と思った。終わりそうなものは、自ら望んで、最悪の事態へ向かっていくのかもしれない。歴史の教科書の中でもそうだ。

 なんのことかというと、自民党の安倍派のことだ。彼らはそれが大切なことだと信じて、大変な動きをしてしまった。

 9月29日の「JIJI.COM」によると、

「自民党の茂木敏充幹事長は29日、故安倍晋三元首相を『国賊』と表現した村上誠一郎・元行政改革担当相の処分を党紀委員会に諮る考えを示した。処分の申し入れに訪れた安倍派の塩谷立会長代理に伝えたもので、塩谷氏が記者団に明らかにした」「安倍派はこれに先立つ総会で、村上氏に厳正な処分を求める決議を行った。塩谷氏は記者団に『大変問題な発言だ。(衆院選への)立候補にも安倍総裁の公認をもらっている。その人を国賊と言ったら、自ら先にやめるべきではないか』と指摘し、自発的に離党するよう訴えた」

 という。

 この原稿を書き出した時点で、あたしは多分、処分はなされないと思った。記事によれば、茂木幹事長は「処分を党紀委員会に諮る考えを示した」だけである。なにより、村上氏は選挙に強い。塩谷会長代理が望むように、辞めさせるなんてできないだろう。

 安倍派が気炎をあげているだけで、どうにもならない。というか、この気炎は自らを燃やし尽くす方向へ向かっていそう。

 そう考えていたら、党紀委員会は10月12日、村上氏を1年間の役職停止処分にすると決めた。村上氏も「処分を重く受け止める。発言を撤回し、おわび申し上げる」と謝罪したそうだ。

 国民の間でも反対多数で、揉めに揉めた国葬が終わった。しかし、いつまでも国民との間にねっとりとした禍根を残すだろう。

 国の儀式としての国葬であったが、国葬を行う理屈に納得できない人が多数いて、またそこに話が戻ってしまうからだ。

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室井佑月

室井佑月

室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

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