「麻原彰晃」と名乗った松本智津夫氏
「麻原彰晃」と名乗った松本智津夫氏

 旧統一教会に法的な規制を求める議論が活発化する中、注目されるのが2001年にフランスで施行された「反セクト法」。「世界で最も厳しい」とされるカルト規制法だ。

【写真】かつて解散命令が出されたオウム真理教の事件

 フランスでカルト宗教が問題視されるようになったのは1990年代中ごろ。95年3月に日本ではオウム真理教による地下鉄サリン事件が起きたが、同年12月にフランスでも新興宗教「太陽寺院教団」が集団焼身自殺事件を起こし、子ども3人を含む16人の遺体が山岳地帯で見つかった。

 このころ、旧統一教会も欧州で勢力を拡大していた。94年3月6日付朝日新聞によれば、フランスの右翼政党「国民戦線」の幹部らが旧統一教会関係者と会談。信者の親たちによる「息子や娘が過激な布教に巻き込まれている」という被害の声も報じられている。

 こうした中、95年12月にフランス国民議会のセクト調査委員会が提出した「ギュイヤール報告書」では、宗教団体が反社会的な行動をしているセクトか判断するために、「精神的不安定化」「法外な金銭要求」「元の生活からの意図的な引き離し」など10項目の指標を提示するとともに、170以上の具体的な団体名が書かれたリストも公表された。そこには旧統一教会も含まれていた。

 フランス政府の対策機関は、この指標に基づき団体の監視を行う。複数回の有罪判決が下された団体を大審裁判所(地裁)が解散させることも可能だ。

 フランス出身で、映画を通して社会や政治問題を研究している横浜国立大学のファビアン・カルパントラ准教授は同法をこう説明する。

「監視対象にはアジアやイスラムなどの宗教も含まれており、移民の持ち込む宗教を取り締まる側面もあるのでしょう。フランスのアイデンティティーにも関わる法律で、フランスにも『ライシテ』という政教分離の原則がありますが、実際にはカトリック教会の影響が大きく、カトリック以外の宗教には排他的な傾向があります。日本では公共の場でイスラム教のスカーフを着用しても問題にならない宗教的な自由がある。反セクト法を日本に持ち込めばメリットもありますが、そうした自由を失う危険性も考えなければいけません」

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