最後の校歌を歌い終え、アルプススタンドに駆け出す仙台育英の選手たち=8月22日(撮影/写真映像部・東川哲也)
最後の校歌を歌い終え、アルプススタンドに駆け出す仙台育英の選手たち=8月22日(撮影/写真映像部・東川哲也)

 夏の甲子園で初めて頂点に立った仙台育英。14日発売の本誌増刊「仙台育英 東北勢初優勝 開いた『100年の扉』」で須江航監督に独占インタビューした。東北への思い、指導で心がけてきたことなど、そのダイジェスト版をお届けする。

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──優勝監督インタビュー冒頭の「宮城の皆さん、東北の皆さん、おめでとうございます」は、あらかじめ、そう言おうと決めていたのですか?

 いや、自然と……準決勝が終わった段階で約2千通のメッセージをもらっていて、ほとんどが、東北代表として頑張ってください、という文面だったんです。選抜と違って選手権は県の代表ですが、「東北の代表なんだ」という思いが強くなっていたんですよ。準決勝の相手が聖光学院(福島)さんだったからかもしれませんが、東北感……東北の後押しをすごく感じていました。

──東北感?

 福島代表は負けたけど宮城代表が残ってるから応援しよう、というようなメンタリティーです。

 僕は埼玉出身で高校から仙台育英に進学し、東北で暮らしている時間のほうが長くなりましたが、15歳まで“甲子園”をどう見ていたかというと、埼玉代表が負けたからって同じ関東の千葉代表、東京代表を応援しよう、とは思いませんでした。それが、仙台育英が早々に負けてしまったときは残っている東北の学校を心から応援している自分がいて、監督になってからも、そうなんです。

──「青春って密」というフレーズは今、日本中で注目されています。

 3年生はどうですか?と聞かれたので、こういうふうに言ってたな、彼らは大変だったよなぁ、と思って出た言葉で、美しく受け取っていただいてピックアップしていただきましたけど、もともとはコロナ禍のミーティングで使ってきた言葉なんですよ。

 高校生は物理的な距離が近いですよね。そういうとき、「仲が良いのはわかるし、青春って密なんだけど、クラスターになっちゃったら大会に出られなくなったりするんだよ。密なのは本当はほほえましいんだけど、今はダメなんだ」と。

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