いずれはどんなマンションも直面することになる解体や建て替えを見据えた計画も、できるだけ早いうちから立てておくのに越したことはない。

「いわば“マンションを使い尽くす”という視点で、築80年に向けたマスタープランを作るのも手。80年となると、世代交代もあり、今の意思決定が変わる可能性もありますが、長期的な視点で資産価値を維持するという考え方で動いていて損することはない」(米山さん)

 将来を見据えた計画を考える上で大切になるのが、所有者としての当事者意識だ。大手マンション管理会社、大和ライフネクストの久保依子さんは言う。

「マンションは、誰が役員になるかで、運営の仕方が大きく変わってきます。特に大きいのが、理事長としてリーダーシップを取る人の人柄。マンション管理について積極的に知ろうとする姿勢、経営的な視点、周囲からの人望がそろった人がリーダーになると、物事が円滑に進んでいきやすい」

 同社の管理現場で、多くの管理組合を担当してきた大野稚佳子さんに、課題解決が進む管理組合の特徴を聞くと、「当事者としてのぶれない軸を持っていること」という答えが返ってきた。無論「自分が役員を務める代では、何事もなく終わらせたい」と願う人が少なくない。それでも課題を解決していくには、個々の価値観の集まりの中で何とか折り合いをつけ、譲れないものを決めて実行していく力が必要だ。

「そうした意味で、経営感覚がある人は強い。いつまでに何を決め、何を実行しないといけないのかを把握し、主体的に動ける人です。今までのやり方を疑う視点も時には必要。心地よい住まいは、そこに住む人の手によってつくられることを強く実感します」(大野さん)

 長生き時代の集合住宅には、先を見据えた計画性や実行力が必要になってくる。さて、あなたが住むマンションの未来は、どうだろうか?

(フリーランス記者・松岡かすみ)

週刊朝日  2022年9月16日号

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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