「マンション管理は、いわば会社経営。管理会社任せや素人役員が1年交代で務めていたのでは、ノウハウも蓄積されず、物事が進んでいかない。理事が責任を持ってマンション管理を学び、真剣に将来を考えていくことが必要」(同)

 分譲開始から暮らし続ける住民は高齢期を迎え、車椅子で一人暮らしをしている高齢者もいる。高齢世帯が年を取っても住み続けるための施策として、共用部分をバリアフリー化したり、朝夕の巡回による安否確認、また希望者は管理組織で鍵を預かり、いざという時に室内に入れるようにするといった対策も行っている。同時に若い世帯を意識したイベント企画やコミュニティー活動の成果が実を結び、途中入居の住民には子育て世代が多いという。

 将来の建て替えを見据えた取り組みは、18年前から検討委員会を設置し準備をスタート。敷地内の駐車場利用料を財源とする「環境整備積立金会計」を設置し、建て替えに備え、隣接する土地を買収していく計画を立てた。すでに隣接地を一部取得しており、「いつか来る建て替えに向けて資金を積み立てる」のではなく、「不動産を保有してその時に備える」という考えのもとで計画を進めている。増床分を第三者に売却あるいは等価交換すれば、住人の追加負担なしで建て替えが実現できるという構想だ。

「建て替えや解体は、どんなマンションもいずれは直面する現実。先のことを考えたら、打てるうちに少しずつでも手を打たないと」(同)

 自分たちの資産は、自分たちの手で守る──。考えてみれば当たり前のことなのだが、集合住宅となると“所有者”として「建物を管理していく」という意識がどこか欠落してしまうケースが少なくない。問題を抱えながらも先延ばしにしてきた結果、困難な壁に突き当たるケースもある。

「ピンチをチャンスに変える発想を持ったマンションは、その後の管理がうまく進むことが多い。困ったことがあった時こそ、これまでのやり方を変えるべきタイミング」

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