草野完也・名古屋大学教授(宇宙地球環境研究所所長)はこう話す。地震はローカルな災害だが、太陽フレアは地球規模の影響になるという。草野さんによると、太陽フレアは太陽の黒点で起き、たまったエネルギーが爆発的に放出される。

 太陽フレアの発生で、高温ガス(プラズマ)から強力な光が出て、光の速さで電磁波や放射線が約8分で地球に到達する。次に、高エネルギー粒子が30分から数時間後にやってくる。そして、高温の電気を帯びたガスが1~5日程度で地球に届く。これらが、さまざまな影響を及ぼす。特に現代では「通信と電力が失われると厳しい」と草野さんは指摘する。

 地上から60~1千キロ以上の高度に電離層(電離圏)がある。これが地上からの電波を反射し、長距離の通信を可能にしている。ところが、太陽フレアで出てきた電磁波などは電離圏を激しくイオン化し、通信をできなくする。電離圏の揺らぎで、GPS(全地球測位システム)は精度が悪くなり、誤差が出てくる。

 地球には磁場があるが、太陽の黒点の磁場を伴って飛び出してきたものが地球の磁場とぶつかり、磁気嵐となる。草野さんによると、磁場が乱されることで送電線に過剰な電流が流れ、変圧トランスの油に着火して燃える可能性がある。その電力ネットワークでは電力供給が停止する。草野さんは「カナダ・ケベック州のケースの10倍くらいの規模で起きる可能性がある」とみている。

 携帯電話も使えなくなるかもしれない。情報通信研究機構の津川卓也・宇宙環境研究室長は「スマートフォンの基地局の直線上に太陽があると携帯電話がつながりにくくなる。太陽フレアに伴う電波雑音の増大による影響と考えられる」と話す。

 このほかにも、太陽フレアにより大量の放射線などが放出され、高軌道の人工衛星が直接、影響を受けて、機能を乱される恐れがあると草野さんは指摘する。フレアで大気が急激に膨張し、抵抗が大きくなり、最悪の場合は衛星が落ちてくるという。最後は燃え尽きるのだが、今年2月の米スペースXのケースがそれに該当する。草野さんによると、日本の人工衛星でも、空気抵抗で姿勢が変わって制御不能になり、落ちてきて、燃え尽きたケースがあるという。

 宇宙飛行士は放射線で被ばくする恐れもある。

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