倉本聰さん(本人提供)
倉本聰さん(本人提供)

 北海道・富良野在住の脚本家・倉本聰さんが、現在招致活動が行われている札幌での冬季五輪について語った。

【写真】1972年札幌五輪で表彰台を独占した「日の丸飛行隊」はこちら

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 1972年の札幌冬季五輪から50年を経て、再び冬季五輪をやろうと招致活動をしていますが、僕自身の気持ちで言うと今さらやったって意味のないことだと思います。

 去年の東京五輪を見て、五輪自体がつくづく商業化され、政治的思惑で動いていることを痛感しました。国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長の言いなりになって、どれだけ国益につながったのか。64年の東京五輪では高速道路の整備などができたから意味があったと思いますが、あれから58年経って、その道路も老朽化しています。それらを直すことにつながる五輪だったらまだいいかもしれませんが、今回は目的がわからなかった。安倍晋三元首相は福島第一原発について「アンダーコントロール」と言いました。ああいう嘘をついてまで日本に誘致しようとした態度は僕には納得しかねる。

 72年の札幌五輪のことはよく覚えています。当時、五輪をテーマにした「風船のあがる時」というドラマを作った。開会式で何千個の風船を小学生が上げるんですが、その担当をする男性の話。フランキー堺さんに主演してもらいました。

 あの五輪で、確かにそれまでの「哀れな札幌」が「輝く札幌」になった面はあると思います。でも、今は中国はじめ外国資本が北海道の土地を買いあさっている時代。これ以上、世界に札幌を宣伝する必要がどれだけあるのか。

 北海道にとってもいいことなのか。例えば富良野みたいに札幌から離れた場所に住んでいる人間にとっては、全く意味のないことだと思う。72年の札幌五輪の最初の企画では、スキーは富良野に持ってくると言われていた。でも結局は札幌近郊だけで完結しようとして、支笏の恵庭岳の山を削ってスキー場を造ってしまった。自然破壊をして土建屋を儲けさせて、悪いことばかりが残った。また新たに五輪をやるのはナンセンスだと思います。

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