ハブクラゲ(提供:沖縄県衛生環境研究所)
ハブクラゲ(提供:沖縄県衛生環境研究所)

 お盆を過ぎて酷暑は峠を超えつつあるが、まだまだ真夏日から解放されそうにない。これからも生みに涼を求める人は多いだろう。大手旅行会社の調査によると、今夏、国内の旅行先で最も人気が高いのは沖縄とのこと。沖縄では10月頃まで海のシーズンが続くので、マリンレジャーを楽しむ人は絶えない。だが、海にはさまざまなリスクが潜んでいる。

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「海洋危険生物」で最も気をつけたいのが、クラゲの仲間だ。

 沖縄近海では、触手に猛毒を持つハブクラゲが生息する。カサが半透明のため水中で見えにくく、刺されると激しい痛みが生じ、みみず腫れのような跡が残る。沖縄県衛生環境研究所によれば、昨年、海洋危険生物による被害報告件数は107件。そのうち25件がハブクラゲだった。6~9月にかけて多く発生し、過去に3人が亡くなっているという。クラゲの刺胞は毒針入りのカプセルのようなもので、刺された部位には毒針が未発射の刺胞もついている。こすると毒針がさらに発射される。

 刺された場合の応急処置は、すぐに海から上がり、酢をたっぷりかけて触手を取り除くことだ。酢には刺胞の働きを抑える効果があるからだが、酢が役立つのはハブクラゲだけ。他のクラゲの場合は逆効果になるので注意したい。痛みがひどいときは患部を氷などで冷やし、病院を受診する。

“電気クラゲ”と呼ばれるカツオノエボシも強い毒を持つ。外洋性のクラゲで、風の強い日に浜辺や岸に漂着する。日本では、主に本州の太平洋岸から沖縄まで広く分布する。カサは10センチほどの青い浮き袋(気泡体)になっており、通常は海面に浮いている。その下に伸びる触手は、10~30メートルに及ぶ。

 実は、筆者はカツオノエボシに刺されたことがある。沖縄・八重山諸島のある海岸で泳いでいると、右腕に痺れるような痛みが走った。見ると、皮膚に青い糸のような触手が絡みついていたが、周囲にクラゲの姿はない。陸に上がり、応急処置のため海の家に向かうと、同様に手当てを受ける人が続々と現れたので驚いた。みんな離れて泳いでいたにもかかわらず、ほぼ一斉に刺されたのだ。後日、県の担当部署に問い合わせると、こうした状況から「おそらくカツオノエボシだろう」と教えられた。

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死んだカツオノエボシにも触ってはいけない