中国の習近平国家主席
中国の習近平国家主席

 凶弾に倒れた安倍晋三元首相の国葬が9月27日に日本武道館で開催される。岸田文雄首相が葬儀委員長を務め、150以上の国・地域から要人が参列するとみられる。岸田首相は“弔問外交”で存在感をアピールすると予測されている。

 こうした状況の中、国葬が行われる日付をめぐって、永田町ではある観測が飛び交っていた。ある政府関係者がこう語る。

「国葬の2日後の9月29日は、ちょうど日中国交正常化50周年にあたり、民間主導の記念行事が予定されている。政府・自民党の内部には、このタイミングで習近平国家主席の訪日を実現させようという水面下の動きがあったと聞いている。習氏は副主席時代に訪日経験があるものの、2013年3月の国家主席就任以来、一度も日本には来ていない。親中派の林芳正外相や二階俊博元幹事長らがそれぞれのルートでラブコールを送り、何らかの働きかけをしていたようだ」

 しかし、こうした流れは8月2日に米連邦議会のペロシ下院議長が台湾を訪問したことにより、一気に吹き飛んでしまった。ペロシ氏の訪台に激怒した中国は、台湾周辺で長距離実弾射撃や、台湾の東方海域でのミサイル試射を含む「合同軍事行動」を開始。4日には中国軍の弾道ミサイルが初めて日本の排他的経済水域(EEZ)に5発落下。カンボジアで予定されていた日中外相会談も急遽中止となった。同会談は首脳会談実現の露払いと位置付けられていたため、「50周年のタイミングで日中首脳会談を行うという可能性は事実上なくなった」(日中関係筋)。

 外務省国際情報局長を務めた孫崎享氏はこう語る。

「本来、両国の関係が良好であれば日中国交正常化50周年式典を大々的に行うはずのところですが、今回は日中両政府に元からそうした意図は薄かったのではないかと思います。国葬と日中国交正常化の記念日の日付が近かったのは、あくまで偶然ではないか。日本側も岸田首相がペロシ氏と会談するなど協調姿勢を示しているわけですから、日中関係の悪化がより決定的になったということではないでしょうか」

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